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技術士二次試験の対策・筆記試験の選択科目Ⅱ(Ⅱ-1、Ⅱ-2) を初心者向けに解説。勉強方法から過去問の回答例まで

技術士二次筆記選択科目Ⅱの回答例
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技術士二次試験の筆記試験の選択科目Ⅱで答案の書き方が分からない人

これから筆記試験の論文を書くが、筆が止まってしまった人

参考程度に選択科目Ⅱの答案を見てみたい人

技術士二次試験の筆記試験は、択一式ではなく、記述式です。

そのため原稿用紙に何を書いたら良いか分からない方も多いと思います。

私も何から書き始めれば良いか分かりませんでした…。

選択科目Ⅱは令和元年から同じような出題傾向が続いています。

そのため令和6年も似た出題傾向と予測され、傾向に合わせた対策が効果的です。

本記事では、傾向を分析し、実際の試験に備えようというものです。

A判定を取った経験から、私なりのコツを紹介します。

結論

問Ⅱ-1とⅡ-2の双方で効く対策
①体系的に書く
②問題の指示内容を守る
③答案用紙をバランス良く使う

問Ⅱ-1の対策
意見ではなく知識を書く

問Ⅱ-2の対策
「マネジメント」と「リーダーシップ」をアピールする

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>技術士一次 機械/電気で合格
>技術士二次 機械部門で合格
>技術士講座で試した講座は6社
>記事コンテストで銅賞獲得

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目次

選択科目Ⅱ全体の見取り図

選択科目Ⅱは、1枚論文のⅡ-1と、2枚論文のⅡ-2で構成されます。

Ⅰ-1は専門知識を問われている問題です。

Ⅱ-2は専門知識、マネジメント、リーダーシップを問われている問題です。
調査項目と検討項目を挙げ、業務手順を説明し、関係者との調整方法を説明します。

Ⅱ-1の出題パターン

選択科目Ⅱ-1は4つの出題から1つを選択して回答します。

600字の原稿用紙1枚と短いですが、体系的な知識が問われます。

問Ⅱ-1の出題パターン

①概要を述べたのち、~を防止するために取る設計上の方策について、具体的な例を挙げて説明せよ。

②~の代表的な方法を2つ挙げ、それぞれの具体的な方法と~の特性に及ぼす影響を述べよ。

③~について異なる原理に基づく手法を2つ挙げ、それぞれの原理と特徴を述べよ。

④~とそれを評価するための試験方法を説明し、設計時の留意点を述べよ。

Ⅱ-2の出題パターン

選択科目Ⅱ-2は2つの出題から1つを選択して回答します。

600字の原稿用紙2枚で、専門的学識、コミュニケーション、マネジメント、リーダーシップが問われます。

Ⅱ-2の出題パターン

あなたが~~技術の責任者であったとして、下記の内容を説明せよ。

(1)調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)検討を進める業務手順について、留意すべき点、工夫を要する点を含めて述べよ。

(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

令和元年から、このような出題パターンが続いています。

最も出題パターンが固定化されているのがⅡ-2と言われています。

Ⅱ-1とⅡ-2双方で効く対策

Ⅰ-1とⅡ-2の双方で使える対策方法について説明します。

「体系的に書く」「問題の指示内容を守る」「答案用紙をバランス良く使う」を挙げました。個別に説明します。

体系的に書く

まずは体系的に書くという事を説明します。

Ⅱ-1では、「体系的」な知識をアピールしましょう。

Ⅱ-2では、「体系的」な業務方策をアピールしましょう。

添削時に受けた修正ポイントは、「体系的」な論文の書き方でした。

では体系的に書くとはどういう事を言うのでしょうか。

例えば下の図のように、「後戻りの無い実行計画」を実現するために、「準備」「実行」「事後評価」を書くことを言います。

一方で、「壊れない製品設計」を実現するために「疲労強度に留意」「安全率は○○確保」「熱応力に留意」と思い付きのように列挙する事は、体系的な書き方とは言えません。

題意に沿った回答をイメージした上で、回答全体を俯瞰し、隙が無い答案を書いていきます。

理解の助けとして、講師に添削頂いたⅡ-1の回答案を例に出します。

Ⅱ-1 機械部門 材料力学

接触部を有する回転体を設計するにあたり、材料力学の観点から考慮すべき点を述べよ。設計の対象は、各自想定しなさい。

まず、私が当初提出した答案はこちらです。(章立てのみ。詳細は省略。)

答案

設計対象として、~~を想定する。
①軸径の決定 
②軸受の選定 
③軸受グリースのシール、油経路の設計

どこに問題が有るか、分かりますか?

設計のポイントを3点記載した点は良かったです。

しかし、思いついた設計ポイントをただ列挙しただけに思えてしまいます。

軸受ばかりに注目していて、他のポイントが気になってしまいます。

続いて、こちらが添削を受けた後の答案です。

1.接触部を有する回転体
設計対象として、~~を想定する。

2.考慮すべき事項 
(1)接触部の考慮事項 
(2)回転体の考慮事項 
(3)複合した場合の考慮事項

添削後の答案は、「接触部」「回転体」「複合した場合」と全要素を網羅的に捉えています。

各章立ては、このように「体系的」に書き、漏れが無い事を上手くアピールする点がポイントです。

問題の指示内容を守る

続いて、「問題の指示内容を守る」という点を説明します。

Ⅱ-1もⅡ-2も、問題文をしっかり読んで、題意を的確にとらえる。

Ⅱ-1の指示内容は様々。柔軟に、的確に答える。

Ⅱ-2の指示内容は一定の傾向有り。準備して、的確に答える。

選択科目Ⅱ-1は様々な形式で出題されます。

代表的なパターンと、ワンポイントのコツを書きます。

Ⅱ-1の出題パターン

①概要を述べたのち、~を防止するために取る設計上の方策について、具体的な例を挙げて説明せよ。
→問Ⅱ-1の全般に言えますが、関連法令を言えると良いようです。

②~の代表的な方法を2つ挙げ、それぞれの具体的な方法と~の特性に及ぼす影響を述べよ。
→特性に及ぼす影響は、メリットデメリットの両面を述べると良いです。

③~について異なる原理に基づく手法を2つ挙げ、それぞれの原理と特徴を述べよ。
特徴と聞かれて困ったら、「長所・短所」を答えましょう。

④~とそれを評価するための試験方法を説明し、設計時の留意点を述べよ。
→設計時の留意点は、答案用紙次第だすが、3点程度答えると良いです。

Ⅱ-1のパターンは様々ですが、以下の聞かれ方が多いです。

・概要、原理の説明、設計上の方策、設計時の留意点、具体的な方法、特性に及ぼす影響

Ⅱ-2は令和元年から一定の出題傾向が有ります。

Ⅱ-2の出題パターン

あなたが~~技術の責任者であったとして、下記の内容を説明せよ。

(1)調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。
→想定する製品をまず書き、調査・検討事項を3つ程度体系的に書きましょう。

(2)検討を進める業務手順について、留意すべき点、工夫を要する点を含めて述べよ。
準備段階、実行段階、アフターケア段階など、なるべく体系的に項目を挙げましょう。

(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。
→社内人員だけでなく、お客様官公庁との調整方策を書きましょう。

答案用紙をバランス良く使う

最後に「答案用紙をバランス良く使う」という点を説明します。

体系的に章立てしたら、各章の分量はなるべく同じにしましょう。

答案の作り方も、計画性漏れの無さをアピールするチャンスです。

一部に偏った答案では、場当たり的な印象を抱かせてしまいます。

百聞は一見にしかずですので、次の例をご覧ください。

(1)調査・検討すべき事項
①これも必要
②あれも必要
③それも必要
④更にこれも必要
⑤そういえばこれも必要
 その理由は○○・・・

(2)検討を進める業務手順
①準備
②実行
②-1実効策○○
②-2実効策△△
②-3実行策××
②-4上記実行策のバックアップ策○○
②-5上記実行策のバックアップ策△△
③事後調整、評価

(3)関係者との調整方策
これこれのみ留意すればOK。

(1)調査・検討すべき事項
①回転部の事項
②固定部の事項
③摺動部の事項

(2)検討を進める業務手順
①準備
②実行
③事後調整、評価

(3)関係者との調整方策
①顧客との調整
②官公庁との調整
③関係会社、社内との調整

ぱっと見、漏れが無さそうな答案がとちらか。一目瞭然ですね。

技術的な提案がどんなに素晴らしくても、答案自体に計画性が無ければ、伝わりません。

「伝え方が9割」という考え方も有るくらいです。

答案の作成方法にもこだわっていきたいですね。

選択科目Ⅱ-1の対策

特にⅡ-1に使える対策を説明します。

Ⅱ-1では意見ではなく知識を書く

Ⅱ-1では、意見ではなく知識を書きます。

技術分野の専門知識、法令等の知識を理解応用することが求められます。

理解: 「どう言われているか」「どう定義付けられるか」を書く。「どう考えるか」では無い。

応用: その知識を用いて、具体的にどんな方策をとるか。

Ⅱ-1では答案用紙1枚と短いです。

ここではコミュニケーションやリーダーシップは問われていません。

単純に専門的学識を問われているので、意見ではなく知識を書きます。

なお、専門的学識は技術士会より以下の通り説明が有ります。

・技術士が専門とする技術分野(技術部門)の業務に必要な,技術部門全般にわたる専門知識及び選択科目に関する専門知識を理解応用すること。

・技術士の業務に必要な,我が国固有の法令等の制度及び社会・自然条件等に関する専門知識を理解応用すること。

引用元:技術士二次試験 受験申込み案内

Ⅱ-1は「意見」ではなく「理解」と「応用」をアピールします。

平成27年過去問を例にとって、良い例悪い例を説明します。

出題:「金属の疲労強度における影響因子について主要なものを3つ挙げ、概要を説明せよ」

金属の疲労強度のおける影響因子
(1)形状因子
 切欠き:切欠きにより応力集中が生じ疲労強度は低下する。
 寸法:教科書的な知識を端的に述べる。

(2)表面因子
 表面粗さ:教科書的な知識を端的に述べる。
 加工層:教科書的な知識を端的に述べる。

(3)環境因子
 腐食:教科書的な知識を端的に述べる。
 高温:教科書的な知識を端的に述べる。

金属の疲労強度のおける影響因子

先日、○○の製品で疲労強度試験を実施したところ、以下3要素について疲労強度に影響を与える事が新たに判明した。よって、○○の製品を扱う際には以下3点も影響因子として考える。

(1)△△因子
 概要:こんな試験を行ったら、こんな傾向になった。

(2)××因子
(3)□□因子

良い例では、教科書的な知識を箇条書きで述べています。

悪い例では、教科書的な知識ではなく、製品特有の新技術について書いています。

技術士試験では、特許性が有るような新技術は、求められていません。

選択科目Ⅱ-2の対策

続いて特にⅡ-2で使える対策を説明します。

マネジメントとリーダーシップを書く

Ⅱ-2では、マネジメントとリーダーシップを書きましょう。(審査項目です)

問Ⅱ-2は「マネジメント」「リーダーシップ」をしっかりアピールする事。

「マネジメント」は、 個別に、人員・設備・金銭・情報等の資源を配分すること 。

「リーダシップ」は、利害関係をいかに調整したか。

これは私の知恵と経験で言っているのではなく、受験申込書に明記されています。

選択科目Ⅱ-2の評価項目は、専門的学識、マネジメント、コミュニケーションです。

マネジメントとリーダーシップは、筆記試験ではⅡ-2のみですので、確実アピールが必要です。

Ⅱ選択科目の評価項目・・・

専門的学識
マネジメント
リーダーシップ
コミュニケーション

このうち、専門的学識と、コミュニケーションは、問ⅠⅡⅢ全てで問われます。

問Ⅱ特有のコンピテンシーは「マネジメント」と「リーダーシップ」です。

ではまず、「マネジメント」で具体的に何が問われているか。

「マネジメント」はリーダーシップで決まった方針をもとに、個別に、人員・設備・金銭・情報等の資源を配分することです。

技術士試験での「マネジメント」は、「優先順位をどのように付けたか」を問われています。

参考のため、技術士会HPに記載されている「マネジメント」を記します。

・業務の計画・実行・検証・是正(変更)等の過程において,品質,コスト,納期及び生産性とリスク対応に関する要求事項,又は成果物(製品,システム,施設,プロジェクト,サービス等)に係る要求事項の特性(必要性,機能性,技術的実現性,安全性,経済性等)を満たすことを目的として,人員・設備・金銭・情報等の資源を配分すること。

引用元:技術士二次試験 受験申込み案内 https://www.engineer.or.jp/

そして「リーダーシップ」は何を求められているか?

リーダシップは、利害関係をいかに調整したか

参考のため、技術士会HPに記載されている「リーダーシップ」を記します。

・業務遂行にあたり,明確なデザインと現場感覚を持ち,多様な関係者の利害等を調整し取りまとめることに努めること。

・海外における業務に携わる際は,多様な価値観や能力を有する現地関係者とともに,プロジェクト等の事業や業務の遂行に努めること。

引用元:技術士二次試験 受験申込み案内 https://www.engineer.or.jp/

選択科目Ⅱ-2(事例問題)でリーダシップを強調するテクニックを紹介します。

想定する事例に、外国人を登場させます。

そして、コンピテンシー項目の「海外における業務に携わる際は、多様な価値観や能力を有する現地関係者とともに、プロジェクト等の事業や業務の遂行」ができることをアピールします。

どの設問でも使える骨子を作る

選択科目Ⅱ-2は、例年設問が似通っています。

そのため、毎回全く違う骨子を考えるのではなく、ベースとなる骨子を小変更して答案を作成します。

私が受験する際に使用した骨子の例を紹介します。

(Ⅱ-2の構成の例)
1. 調査検討事項(以下4項目から2~3項目を記述)
1-1.企画設計条件
 負荷・周辺機器・設置場所など、企画設計しようとしている設備・機器の使用条件を調査検討する。(数量、要領、寸法、性能(定格)、発注者が抱える問題など)
1-2.法律・特許
 留意すべき法律・特許がある場合は、適法の検証方法や、特許の回避方法などを検討する。
1-3.納期・コスト
 企画設計条件をもとに、コスト、納期、要員、波及効果(対環境)などを検討し実現性を確認する。
1-4.検証方法
 企画設計条件に合わせて製作したものに対し、評価方法や検証方法などを検討する。
2. 手順及び留意点(以下4項目から2~3項目を記述)
2-1.企画設計
 事前に調査した、企画設計条件・法律・特許などを考慮し、与えられた条件で企画設計を行う。
2-2.図面(机上)検証
 企画設計内容の性能などが、与えられた条件に合うか、関係者を含め図面(机上)で確認する。
2-3.製作及び試験・評価
 製作・社内試験完了後、与えられた条件を満足していることを確認・評価し、関係者の納得を得る。
2-4.フェーズごとの評価
 前述の2-1.〜2-3.のフェーズ毎に、PDCAを回し、正しく進行していることを確認する。
3. 推進時の調整方策(以下2項目を記述)
3-1.図面・書面(現場現物)で行う
 データ、図面、書面などを用いて、関係者に説明し了解を得る。現場を確認しながら行うと良い。また、建設現場周辺の住民を含める必要がある場合には、住民説明会なども開催する。
3-2.定期的に行う
 進捗に合わせ、また、定期的に関係者を集め確認を行う。

上の骨子例をそのまま答案に書くと、文字数が足りずに貧弱な論文になります。論述の根拠が伝わるよう、重要な項目に絞って章立てします。

選択科目Ⅱ-2の添削例

選択科目Ⅱ-2の答案作成の参考として、私が受けた添削の例を紹介します。

このような添削のポイントをまとめた記事となります。

最も気を付けたポイント

・設計の高度化をする「目的」を最初に明示し、事前検討と業務手順を結びつける。

太陽光発電所は、風力条件・日照条件・機械システム・電気システムが密接に関連しています。そのためいきなり詳細設計をしてしまうと、後から設計変更が必要となった時にシステムを横断して大変更が必要になります。これを防ぐために1DCADという考え方を利用し、全システムを横断的に簡易解析することが肝要です。これを行うためには、①1DCAD化→②主要パラメータの決定→③詳細設計と設計審査→④運用及び保守 の業務手順を踏みます。この業務手順で躓きそうなポイントにたいし、事前調査と事前検討を行います。

このように考えて論文の骨格(タイトル設計)をしてから、答案を作成しました。

▼スタディング技術士講座での添削例
スタディングの技術士講座で選択科目Ⅱ-2を受けてみた 失格判定からA判定の軌跡>>

▼アガルート技術士講座での添削例
アガルートの技術士通信講座で選択科目Ⅱ-2添削を受けてみた>>

▼添削のためにどの講座を受けようか迷っている方は、こちらが参考になると思います。
【添削ならコレ!】技術士(二次試験対策)おすすめの論文添削を6社紹介 ランキングベスト3を発表!>>

Ⅱ-1の過去問回答例

少し多めに6回分の回答例を開示します。

必ずしも上で紹介したノウハウに沿ってなく申し訳有りませんが、まだⅡ-1の答案を書いていない人にとっては参考になると思います。

機械部門 平成30年 ひずみ測定

機械部門材料力学 平成30年 Ⅱ-1

ひずみの測定について異なる原理に基づく手法を2つ挙げ、それぞれの測定原理と特徴を述べよ。

1.電気抵抗ひずみゲージを使用する手法 
(1)原理
 
図1に示すように抵抗体をグリッド状に加工し電気的絶縁体の上に設置した構造を有す。物体の表面にひずみゲージを接着し、物体の変形に追随して変化するひずみゲージの電気抵抗変化をホイートストンブリッジ回路で増幅して読み取る。

(2)特徴 
・内部応力以外広く実物に適用 
・遠隔操作、屋外実験も可能 
・安価で精度良好、取り扱い容易 
・ゲージ長が長く、大きな取り付け寸法が必要

2.赤外線による応力測定法 
(1)原理
 
固体に引張り・圧縮の力が加わると体積変化が断熱的に生じ、吸熱・発熱による温度変化が現れる。この温度変化に依存して照射される赤外線を測定し、主応力和の変化量を求める方法。

(2)特徴 
・応力分布を面情報で評価可能 
・負荷による温度変化はわずかであるため、繰返し負荷を作用させる必要が有り、静的な計測に不向き 
・非接触での測定のため微小部分から大構造物まで形状が複雑なものでも測定可能   

以上

機械部門 令和元年 疲労強度

機械部門 材料力学 令和元年 Ⅱ-1

金属製部品の疲労強度を向上するために利用される表面処理方法を2つ挙げ、それぞれについて具体的な方法を説明し、原理及び特徴について述べよ。

1.塩浴軟窒化処理法 
(1)具体的な方法 

塩浴としてNaCNOを用い、約570℃の低温でチタン容器の底から空気を吹き込み、鉄鋼及び鋳鉄部品を処理する。

(2)原理 
鋼がオーステナイト化しない500~610℃程度の低温で、表面に窒素を浸透させ、最表面に化合物層、その下に拡散層を形成する。

(3)特徴 
・処理による素材変形量が少ない。 
・通常のガス窒化と比べてより短時間で処理可能。 
・500℃前後の高温にも耐えうる。

2.ショットピーニング 
(1)具体的な方法 
金属ビーズやセラミック粒子を使用して、塑性変形を起こすのに十分な力で表面に衝撃を与える方法。

(2)原理 
冷間加工の一種で、表面を可塑的に膨張させ圧縮残留応力層を生成することで、機械的性質を改良する。

(3)特徴 
・耐摩耗性の向上、耐応力腐食割れ特性の向上、放熱性の向上、流体抵抗の減少等の効果がある。 
・材料依存性が少なく、ばね、歯車、ジェットエンジン、圧力容器等幅広く使用可能である。  

以上

機械部門 添削課題 回転体の設計

続いて新技術開発センターにて、セミナー時に添削頂いたⅡ-1の回答案を開示します。

提出時にA判定を頂いた答案に対し、添削での指摘事項を盛り込んだ答案となります。

問Ⅱ-1 機械部門 材料力学

接触部を有する回転体を設計するにあたり、材料力学の観点から考慮すべき点を述べよ。設計の対象は、各自想定しなさい。

1.接触部を有する回転体
対象はロープ式牽引機を想定する。高荷重を負荷するため、潤滑油を封入した軸受を使用する。巻上機の主要機能は、モータとブレーキである。システム全体を保持するため、ブレーキ押付力が強く、そのブレーキGAPが小さいことが特徴である。

2.考慮すべき事項
(1)接触部の考慮事項
まず、ライニングの接触面圧が、耐力を超えないようにする。その際ブレーキ急作動を想定し、衝撃力を安全率として確保する。更にライニングの接着せん断強度として、疲労強度、クリープ特性を確認する。その結果、圧縮、せん断方向に破壊が無いブレーキを得る。

(2)回転体の考慮事項
ロータの回転周波数が、固有振動数と一致しないよう設計する。更に、ロータ回転振動時のロータ変位量がブレーキGAPに対し、十分小さいことを確認する。その結果、ロータの異常振動や、ブレーキ引き摺りの発生しない、安全なロープ式牽引機を得る。

(3)複合した場合の考慮事項
接触部に設けた軸受グリスの給排出経路について、オイルシールやフェルトを使用し、回転体の制動面に油が至らぬよう配慮する。ブレーキ動トルク発生時のスティックスリップ振動エネルギーが、モータ磁石破損エネルギー未満であることを確認する。 以上

機械部門 平成28年 応力集中

機械部門 材料力学 平成28年 Ⅱ-1

応力集中について、その概要を説明し、機械・構造物の強度に及ぼす影響と、設計・製造上の留意点を述べよ。

1.応力集中の概要
応力集中とは、図1のように切欠きを持った部材に荷重Pが作用した場合、公称応力σ=P/Aよりも大きな応力が切欠き部に作用する現象である。応力集中は図2の場合に発生する。

(1)切欠き部
(2)コーナー部
(3)空孔部
(4)断面形状変化部

2.強度に及ぼす影響
(1)短期的な影響(破損・降伏)

応力拡大係数α=σmax0と隅Rの関係は図3の通りであり、Rが0の場合はαは無限大に発散する。

(2)長期的な影響(疲労破壊)
許容応力σ=σ0×β×他因子×安全率。βは図4の通りであり、αが大きくなっても最大3程度である。

3.設計・製造上の留意点
(1)3D図、FEM解析によるモデル全体の応力集中源を把握する。
(2)応力発生個所はαの影響からRを設定する。
(3)接合部など非連続部は、異種材による熱応力に耐え、塑性変形時に破断を避ける設計とする。  

以上

機械部門 平成27年 安全係数

機械部門 材料力学【平成27年Ⅱ-1】

機械構造物の強度設計における安全係数(又は安全率)について、使用する理由とともに、値を設定する上で考慮すべき項目について述べよ。

1.安全率を設定する理由
製品に作用する荷重や基準強さを正確に見積ることは困難であるため、安全率を設定する必要がある。具体的には、①最大応力が、②基準強さを上回った場合に物体は破壊に至る。①最大応力は、製品を使われ方、材料や組立の精度にバラツキが発生する。②基準強さは材料自体の物性によりバラツキが発生する。これらのバラつきを考慮し、①<②を担保するために設計者が設けるのが安全率である。

2.値を設定する上で考慮すべき項目
①「基準値」に影響するもの

・材料物性のバラツキ
・材料の異方性
・経年劣化
・製品の耐用年数
・製品の使用環境(温度、水分、紫外線、腐食ガス)

②「設計上想定される最大の値」に影響するもの
・製品の使われ方(使用頻度、使用期間 等)
・製品の想定される使用者(成人、子供、幼児、高齢者、国籍等)
・寸法や組立精度のバラツキ

以上

機械部門 令和元年 力学的挙動

令和元年Ⅱ-1 材料強度信頼性

複雑な構造物の力学的挙動を予測する手法を2つ挙げ、それぞれの特徴と留意点を述べよ。

1.具体的な構造物の設定
ブレーキシュー(FC250材)を想定する。

2.有限要素法を利用した解析
2.1.FEM解析の特徴

3DCAD図から物体の要素を質点の集合体に変換し、微分方程式の近似解を得る方法。安価で容易。
2.2.FEM解析の留意点
①応力集中部、接触境界部の応力値は測定困難
②接触を伴う解析は時間を要する上に精度が低下する
③メッシュ粗さや接触条件、物性値など使いこなすためには技術力が必要

3.縮小モデル、ひずみゲージを使用した実機評価
3.1.特徴

①試作品、荷重印加装置を用意する必要があり、コストと時間が掛かる。
②意図しない変形が発生した場合に原因調査が可能。
3.2.留意点
①寸法が変わるため、熱処理に要する時間やメッキ膜厚の変化に留意する必要がある。
②ひずみゲージを貼り付ける箇所はRa=6.3未満に磨き、10mm×10mm程度の貼り付けスペースが必要。
③製作寸法、材料物性にバラつきが有るため、個別に計測確認が必要。          

以上

Ⅱ-2の過去問回答例

3回分の回答例を開示します。

必ずしも上で紹介したノウハウに沿ってなく申し訳有りませんが、まだⅡ-2の答案を書いていない人にとっては参考になると思います。

機械部門 令和元年 機械の保守

機械部門 材料力学 Ⅱ-2 【令和元年】

長年使用した機械構造物の保守担当責任者として、構造強度的な観点から継続使用の可否を判断する場合、下記の内容について記述せよ。

(1)調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。
(2)検討を進める業務手順について、留意すべき点、工夫を要する点を含めて述べよ。
(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

(1)調査、検討すべき項目 
ロープ式牽引機を想定する。モータとブレーキを有す。図1の通り。

(1)-1調査すべき事項 
(1)-1-1定期的に交換する部品の検討 
①摺動部材の継続使用検討
 
軸受:異音有無、回転軸振れを確認する。 
軸受用グリース:粘度の変動、早期の変色、摩耗粉付着、分離油の量を確認する。 
オイルシール:グリースの漏れを目視確認する。 
ブレーキパッド:パットの残量を寸法確認する。摩耗粉の量とパット材の欠け有無に留意する。

②摺動部以外での継続使用検討 
グリース排出ゴムホース:カバーの嚙み込みによるホースのちぎれや、応力腐食割れ有無を目視確認する。

(1)-1-2定期的な交換を想定しない部品の検討 
主軸の疲労破壊:疲労破壊の予兆を確認するために、表面の微小傷を浸透探傷試験で確認する。 
モータの磁石割れ:破片の接触音やモータ電磁音が発生するため、回転周波数依存の騒音発生に留意する。

(2)検討を進める業務手順 
(2)-1部品ごと交換タイミングの把握 
①設計部門から部品の想定寿命入手

設計部門から部品の想定寿命を調査可能ならば情報を入手する。不可能な場合は、以下の通り算出する。

②軸受、軸受用グリース、オイルシール 
軸荷重、駆動速度、温湿度等の使用条件から算出する。

③ゴムホース 
アレニウスの法則を利用し、高温環境下にて早期劣化させ、試験時間の短縮を図る。

④軸の疲労強度及び余寿命 
寸法効果、切欠係数、表面粗さ係数を考慮し疲労線図を作成する。材料・荷重ばらつきから安全率=1.45を見込む。表面亀裂サイズから余寿命を算出する。

 (2)-2調査に掛かるコストの見積り 
人員:設置台数に応じた点検人員を確保する。不具合発生時も無理が無いよう、2割程度余裕を確保する。 
設備:非破壊試験装置を各支社に配備する。 
金銭:全ての行程に掛かる費用を合算し把握する。 
顧客負担:牽引機を停止する旨事前に了解を得る。

(2)-3調査点検の教育実施 
熟練者の指導動画を全国支社に配信し効率化する。

(2)-3FMEAによる対応優先度の決定 
FMEAを利用し、万が一部品が損傷した際の影響度と故障発生率から、対応優先度を決定する。

(3)関係者との調整方策 
①計画的な調査スケジュール立案と施主への説明 
②定期点検に必要な保守人員の配置と技能研修 
③欠陥発見時、設計部隊への情報連絡システム構築 
④部品受発注の情報システム、物流の構築

機械部門 平成27年 損傷モード

機械部門 材料力学【平成27年Ⅱ-2】

機械構造物は長期間の稼働の後、各種の損傷により機能の損失や破壊に至る。
(1)具体的な機械構造物を想定し、損傷モードを挙げた上で、これに及ぼす材料力学的要因を多面的に述べよ。
(2) (1)の項目から最も重要と考える項目を挙げ、損傷を防止するための技術的提案を述べよ。
(3) (2)の技術的提案の効果と想定されるリスクを述べよ。

1.ドラム式ブレーキシューの想定
具体的な工業製品として、ドラム式のブレーキシューを想定する。ライニングが鉄製のシューに接着剤固定される。シューには押付バネから力を受け、ライニングを制動面に押す機能を有す。
損傷モード:シューのき裂・切断、接着剤の剥離



(1)押付力による繰返し引張圧縮疲労破壊
ブレーキ動作、非動作の繰返しにて疲労破壊する。
(2)非常時動作による衝撃破壊
非常時に急峻に電力を遮断しブレーキを落下させるため、シューに衝撃力が加わる。
(3)接着剤のクリープ破壊
最大50℃の環境にてカゴを静止保持し続けるため、接着剤に応力が掛かり続けクリープ破壊する。
(4)応力腐食割れ
結露にて水滴が発生しうるため、応力集中部への応力腐食割れ懸念がある。


2.最も重要と考える項目「疲労破壊」の防止策
(1)疲労限度線図による材料、寸法、表面処理の選定

素材はFC250を使用し、コスト面と厚肉構造を両立する。両振引張圧縮の疲労限から疲労線図を引き、素材バラつき、荷重変動を考慮し安全率=1.45とし寸法決定する。
(2)FEM解析による発生応力把握
ライニングより等面圧で荷重を受けた際の発生応力をFEM解析する。球面座の接触は摩擦係数=0.09にて摩擦指示とし、球面ヘッドを固定する。
(3)ひずみゲージによる発生応力の確認
測定箇所をRa=6.3程度まで紙やすりで磨き、電気式日組ゲージを接着する。応力発生方向に注意してゲージを貼り付ける。解析値と同等である事を確認する。
(4)疲労試験後の浸透探傷試験
1500万回動作後、浸透液を探傷面に塗り、染み込むまで5~30分待つ。その後ウエスにて傷内部以外の探傷液を除去し現像材を付ける。き裂無き事を確認する。


3.技術的提案の効果とリスク
(1)効果
①環境温度-10℃~50℃、25年間駆動可能

②安価な低級鋳物材適用により材料コスト低減可能
応力腐食割れ対策として低級材の肉厚構造とした。
③浸透探傷試験による検査コスト低減
超音波探傷試験等、高価な検査機器が不要。
(2)リスク
①取付不良や異物噛み込みによるシュー破断

シューは球面座に面接触するが、そこに異物が噛みこむと面圧が急増し脆性破壊を促進する。シュー動作を監視可能なようにスイッチで異常検出の対策を取る。
②薬品使用物件やオイルミスト環境下でのSCC発生
SCCを促進させる特殊物件については、隙間部をゴムで密閉するカバーを適用する。

以上

機械部門 添削課題 残留応力

続いての回答例は、新技術開発センターにて、添削を頂いた答案となります。

なお、添削を受ける前の答案は70点/100点(A判定)の評価をいただきました。

今の基準では合格点に至らないかもしれないので、その点はお気をつけ下さい。

機械部門 材料力学【H28添削Ⅱ-2】

工業製品の中には、残留応力を積極的に利用して品質や強度上の効果を向上されているものがある。一方で予期しない残留応力にはデメリットもあり、背計上何らかの対策をしなければならない場合も多い。材料力学的観点から、以下の問いに答えよ。

(1)残留応力のメリット、デメリットを述べよ
(2)残留応力を利用している製品を3つ挙げ、それぞれの残留応力の付与方法について述べよ。
(3)デメリットの場合の対応策とその効果について、あなたの意見を述べよ。

1.残留応力のメリット、デメリット
1.1.メリット(圧縮方向の残留応力

(1)表面強度の向上  表面に作用する引張応力を打ち消す。
(2)耐疲労性能向上  図1の通り、き裂抑制により寿命延伸する。

1.2.デメリット(引張方向の残留応力)
(1)表面強度の低下
  表面に作用する引張応力を助長する。
(2)耐疲労性能低下  図1の通り、き裂を加速させ、疲労性能低下させる。

2.残留応力を利用している製品と応力付与方法
(1)強化ガラス 

①イオン交換法  Naイオンを含有したガラスを、Kイオン水溶液に浸け、ガラス表面にKイオンを侵入させることで、表面に圧縮応力を付与する。
②風冷強化法  板ガラスを650度付近の軟化点温度まで温度を上げて、冷風により表面温度を急激に低下させ、表面に圧縮応力を付与する。

(2)バネ  無数の鉄球を高速度でバネ材に打ちつけ、材料表面をへこませる。その結果、表面に圧縮の残留応力を付与する。ショットピーニングという。

(3)大砲の砲身  アルミ、クロム、モリブデンなど窒化物を含む鋼を、アンモニア雰囲気内で500℃で加熱する。すると鋼の表面近傍に窒化物を形成するため、圧縮残留応力が発生する。窒化処理という。

3.残留応力(デメリット)の対応策と効果
3.1.対応策
(1)具体例  

鍛造軸を想定する。鍛造軸は高温にしたS45Cをハンマーでプレスし成形する。加工中に空冷され、その冷却収縮速度が部材内で異なるため、内部に残留圧力が発生する。引張の残留応力が発生する個所では強度、疲労性能が低下するため、応力除去したい。

(2)応力除去焼きなまし(対応策)  
鍛造軸を炉に入れ、550~650℃で加熱保持する。鋼は約450℃以上で再結晶温度となるため、内部の残留応力が抜ける。その後、炉に入れたまま徐々に温度を下げて冷却させる。450℃以下まで下がれば、空冷しても良い。

(3)処理  
S45C材を使用して鍛造軸を試作したが、引張強度が基準値560MPaに対し、540MPaとなりNGとなった。その際温度チャートを確認したところ、加熱保持時間が30分程度と短かったことから、1時間に変更した。その結果、引張強度が580MPaに改善した。

まとめ

ここまでお読み頂きありがとうございます。筆記試験の選択科目Ⅱのポイントは次の通りです。

問Ⅱ-1とⅡ-2の双方で効くコツ 
①体系的に書く
②問題の指示内容を守る
③答案用紙をバランス良く使う

問Ⅱ-1で効くコツ
意見ではなく知識を書く

問Ⅱ-2で効くコツ
「マネジメント」と「リーダーシップ」をアピールする

レベルの低い解説で申し訳ございませんが、皆様にとって役立ち情報があれば幸いです。

選択科目Ⅱ-2では、2022年に添削を受けて、A判定の答案を作成しています。

そちらの答案作成過程については、こちらの記事をチェックしてください。

当ブログでは技術士を目指す方へ、有益な情報を発信するよう努めて参ります。

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それでは、皆様の技術士試験、並びに技術者生活に良き事がありますように。

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