機械設計をしていて、どこが応力集中になるか迷った経験ありませんか?
今日はそんな悩みを解決する方法を紹介します。
物の壊れやすさを知る上で、役に立つと思います。
私は大学、大学院で機械工学を専攻しました。それから8年間、開発設計をしてきました。よく構造解析をするのですが、応力集中箇所の強度判断は設計のキモになります。本当に応力が集中しているのか、それとも解析に失敗していて変な応力集中を拾っているのか。その判断に使える非常に有効な手段です。自信を持って解説します!
(1) 応力集中ってなに?
小さな力でも集中すれば大きな力になるイメージです。
(2) 応力集中を簡単に見つける方法「力の流線」
力の流線を自分で引いて、集中箇所が判断できるようになります!
(3) 力の流線、どうやって使う?
例題をやってみよう
応力集中ってなに?
難しい話は置いておいて、身近な応力集中の例を言います。
ポテトチップスの袋って、上下の面がギザギザになってますよね?
あのギザギザって、袋を開封する時に、破りやすくするためなんです!
そして、ギザギザのところこそ、「応力集中」を利用しているんです!
・・・は?って感じだったらすみません。
もう一つ、カップラーメンの中に入っているソースの袋!
あの袋って切りやすくするために、切込みが入っていないですか?
それも「応力集中」を利用しているんです!
応力集中っていうのは、加えた力が、特定の部分に集中する事を言います。
周辺と比べて、応力集中箇所に発生する応力の倍率を応力集中係数と言います。これは、切り欠きの形状によって決まります。切り欠きの形状がピン角の場合、数値上は応力集中係数が∞になります。しかし、実物のドリルを使用して物を加工した場合、角部の加工は必ず丸みを帯びた形状になります(R=0.5mm等)。そのため、切り欠き係数は、3程度と考えるのが一般的です。
応力集中を簡単に見つける方法「力の流線」
では、実際にどうやって応力集中する場所を見つければ良いのでしょうか。
難しい話をする前に、下の図を見てください。
板材Aと板材Bが有ります。
両方とも真ん中に穴が開いていますが、形が違います。
穴を差し引いた部分(板材の残りの部分)は、同じ長さです。
同じ力で引っ張った場合、どちらの部材の方が壊れやすいでしょうか??
お考え下さい。
正解は、「Aの部材の方が壊れやすい」です。
どうでしたか?予想が当たったという方は、カンが鋭いですね!
その理由を「力の流線」を使って説明します。
下の図を見てください。
板材AとBで力の流線を書いてみました。
上から下へと(上下逆でも構いません)、水路を水が流れる様子をイメージしてみましょう。
左の部材の方が流線が大きく曲がっていて、密になっています。
実は、流線と応力の高低は以下の関係が成り立ちます。
①流線が平行な所は、流れの方向に向かって応力は変化しない
②流線が密となる位置では、応力は高くなる
③流線が曲がる位置では、その前後よりも応力は高くなる
(3)どうやって使うの?
この考え方を応用すると、例えば次の板材ABCでどれが強いか分かります。
この板材を引っ張った場合もしくは潰した場合、どれが最も強いでしょうか。
まずは直感で考えてみてください。
それから、力の流線をイメージしてみてください。
いかがでしょうか?
正解は、A最も強い、Bが次に強い、Cが最も弱い です。
予想が当たりましたでしょうか?
力の流線を書いてみると、板材Cで、流線が最も密になっていますね!
実際、使用している材料の重量で言えば、C>B>Aです。
しかし強度はA>B>Cです!
部材の形を変更したときに、強度設計する必要が有るのかな?
と悩む時が有ると思います。
例えばA→Bのように肉増しすれば、強度が低下しているので詳細検討が必要です!
どうでしょうか。力の流線についてイメージできましたか?
ご自身でも具体的に別部材で力の流線を書いてみてください。
簡単な方法なので、実設計でどんな部材が良いか迷った時の判断材料になります。
(4)まとめ
最後に、今回のまとめです。
①加えた力が、特定の部分に集中する事を言います。
②主な例は、ポテチ袋や、ソースの袋の切り口です。
③応力集中の度合いは、形状によって変わります。
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