技術士二次試験の受験申込書をどう書いて良いか悩んでいる人
受験申込書を書いたが、他人が添削を受けた内容を見て、自分の答案作成に活かしたい人
アガルートの通信講座が気になっており、受験申込書の添削実例が気になる人
技術士二次試験の登竜門の一つ、受験申込書をどう書くか、悩んでいる方は多いと思います。受験申込書を次のようなステップで完成させる方も多いでしょう。
- 申込書の書き方について情報を集める
- 自分が納得するまで書く
- 有識者からフィードバック(添削)を貰う
- 申込書を書きなおす
中でも③のフィードバック(添削)をもらう事は、とても重要だと考えます。しかし、簡単に添削は貰えません。有料だったり、上司(社内講師)の時間をいただくことになります。だから、添削してもらう前に、なるべく完成度を上げたいです。かく言う私も何度も受験申込書を書き直した後、添削で大幅修正を受けて凹んでいます。
添削で大幅修正を受けました。提出前に、なぜ直しきれなかったのか、悔しい。
そこで本記事では、添削を受ける前に少しでも完成度を上げる、お手伝いをさせて頂きます。具体的には、私が受けた添削の内容を公開し、どう修正を入れたか説明したいと思います。ご自身の受験申込書を見直すキッカケとなれば幸いです。
公開は恥ずかしい限りですが、皆様のお役に立てれば本望です。
▼私が受けた講座
専門とする事項は、「何に関する事項」なのか。主語を明記すること。
→「機械構造設計」から「回転機械と電磁ブレーキの構造設計」に修正した。
5行の業務経歴では、毎年もしくは業務が変わるにつれて、成長していることをイメージすること。
技術的思考の流れを整理すること【重要】
→「…という問題点があった。私は、○○に着眼し、○○を課題設定した。その理由は、○○である」
受験申込書の概要
本題(添削の内容)に入る前に、技術士の受験申込書について簡単に説明します。
技術士二次試験に申し込むために、受験申込書を提出する必要があります。
技術士二次試験の受験申込書は次の性質があります。
- 受験資格がある事を証明する
- 口頭試験での審査項目となる
※受験申込書は、技術士会のホームページから入手可能です。
例年4月に受験申込書を提出し、7月に筆記試験を受けるスケジュールとなります。
この記事の主眼は添削なので、詳細説明は割愛します。気になった方はこちらをどうぞ。
技術士二次試験 受験申込書の書き方コツ>>
書き方のポイント
添削内容を紹介する前に、私が気を付けたポイントを説明します。
- 業務経歴は技術士の業務を書く
- 業務経歴は職務ではなく技術経験を書く
- 業務内容の詳細は過不足なく書く
- 受験申込書は口頭試験を意識する
- 解決策はなるべく具体的に書く
では簡単に一つずつ説明いたします。
業務経歴は技術士の業務を書く
技術士の業務は、技術士法第二条により、次の通りです。
第二条 この法律において「技術士」とは、第三十二条第一項の登録を受け、技術士の名称を用いて、科学技術(人文科学のみに係るものを除く。以下同じ。)に関する高等の専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計、分析、試験、評価又はこれらに関する指導の業務(他の法律においてその業務を行うことが制限されている業務を除く。)を行う者をいう。
技術士法より引用
要するに、技術士の業務は以下6つ+αです。
・計画
・研究
・設計
・分析
・試験
・評価
又はこれらに関する指導の業務を行う者。
開発、解析、調査はこれらに入っていません。
開発、解析、調査などよく使うので、うっかり使わないように注意しなければ。
業務経歴は職務ではなく技術経験を書く
業務経歴は職務ではなく、技術経験を書くよう心掛けました。
例えば職務経験を書いてしまった例がこちらになります。
上とは対照的に、技術経験に意識して書いたのが以下になります。
これは2018年に新技術開発センターで添削を受けて、このように修正案を頂きました。
業務内容の詳細は過不足なく書く
業務内容の詳細(720字)は、過不足なく書くよう意識しました。
具体的には次の構成で書いてみました。
1.立場と役割
2.背景と問題点
3.技術的解決策
4.成果
このような構成にした上で、目的から課題、解決策、成果まで一本の筋が通っているよう、説明を心掛けました。
意識したつもりでしたが、添削では「色々書きすぎていて分かりにくい」と指摘されてしまいました。
受験申込書は口頭試験を意識する
受験申込書は口頭試験で質問されるため、深い質問に答えられるかを意識しました。
- なぜその課題が重要と考えるか
- なぜその解決策が有効だと考えたか
- 目的に応じた効果が出ているか
- 解決策を講じた際のリスク確認は十分か
- 科学技術の向上と国民経済の発展に資するか
それが難しい…。意識して書いても、人に伝わるかは別問題なんですよね。
実際に提出した申込書を公開
それでは、実際の添削の紹介をします。こちらが実際に提出した申込書です。
業務内容1
地位・職名:研修生・設計副担当者
エレベータ向け巻上機用ブレーキの4%小型化を目的とした、田口メソッド導入による電磁マグネットの寸法・材質設計
業務内容2
地位・職名:主任・設計担当者
巻上機の振動騒音の10dB低減を目的とした、固有値解析による振動モードの分析とそれを考慮したハウジング脚部の寸法設計
業務内容3
地位・職名:主任・設計担当者
巻上機のIPX2適合を目的とした、巻上機防水構造の設計と、600kgの巻上機を手動で迅速に15度傾ける試験治具の設計
業務内容4
地位・職名:主任・設計責任者
巻上機用ブレーキの12%小形化を目的とした、構造強度解析と構成部品の詳細寸法検討を伴う、ブレーキの全体設計
業務内容5
地位・職名:専任・計画責任者
巻上機の保守部品製作時に発生するコスト削減を目的とした、全故障モードに対する合理的な交換部品単位の選定に関する計画
1.立場と役割
〇〇開発プロジェクト〇〇設計業務のうち、〇〇のブレーキ(摩擦材を利用したドラムブレーキ)全体設計(構造物の強度設計、構成部品の選定)の業務を責任者として行った。
2.背景と問題点
建築資材の使用量軽減のため、建築物に占める〇〇高さを、従来比で〇〇mm低減する必要があった。そのため〇〇のブレーキは〇〇%小形化する必要があった。
しかし以下の理由で困難であった。ブレーキを制御するために、電磁コイルを利用している。電磁コイルの吸引力は、電流値×巻数で決まり、発生した磁束を通すための鉄心容積が必要となる。しかし従来と同等の制動力が必要だったため、鉄心容積を削減できず、小型化は困難であった。
3.解決策
(1)鉄心部分の空隙削減
ブレーキ制動力を支えるピンとバネに対し、穴を共通化することで空隙を減らし、磁束漏れを改善した。この際、ピンとバネが長さ寸法を取り合うため、ピンの長さを最小化する必要があった。ピンが脱落しない最小の掛かり代(5mm)を確保し、ピンが降伏せず疲労破壊が発生しない最小長さ(〇〇mm)を設計した。検証部門の協力を得て、最大荷重試験と寿命試験で性能を確認し、設計を完遂した。
(2)非鉄心部分の小型化
ブレーキを筐体に固定するための六角ボルトにリーマ構造を適用することで、曲げ→せん断へと加重モードを変更し、〇〇→〇〇に小径化した。リーマ部の設計に当たり、ボルトを挿入可能な隙間を確保しつつ、強度を有し、リーマ加工費を最小とするバランスを見極めた。製造・資材部門の協力を得て、試作と組付けトライを繰り返し、設計を完遂した。
4.成果
従来比でブレーキを〇〇%小形化した。その結果〇の高さを従来比で○○mm低減し、建築資材の使用量軽減に貢献した。
添削内容とポイント
このような様式で添削結果を頂きました。※解読できないよう、解像度を落としています。
専門とする事項の見直し
専門とする事項(=機械構造設計)は、以下の通り見直すよう指示がありました。
機械構造設計とは、何についてですか?主語を書いて下さい。
専門とする事項は、受験申込書に書く上に、筆記試験の答案用紙にも記入します。
そのため、自分は「何に関する専門家」なのか、明記する必要があります。
「何に関する専門家」を示す必要があるのに、「機械構造設計」では広すぎます。
あらゆる機器の機械構造設計の経験が有れば書けるかもしれませんが、自分にはわずかな機器の経験しか有りません。
そこで、「回転機械と電磁ブレーキの構造設計」としました。
今まで設計したことがあり、筆記試験で製品例として説明できるものをイメージして決定しました。
専門とする事項「機械構造設計」から「回転機械と電磁ブレーキの構造設計」に変更した。
変更した理由:自分は「何に関する専門家」として技術士を名乗りたいか。筆記試験で「自分の専門技術を踏まえた上で」という問に応えやすくなるように、設定した。
5行部分経歴書は問題なし
地位・職名と業務内容は問題ないようでした。
ただ、一点重要な指摘がありました。
・12年実務経験なので、毎年もしくは業務が変わるにつれて、成長していることをイメージすること
・実際の経験業務は、「設計」が多いと思います。技術士法第二条定義の技術士の業務を参考に各経歴の文末表現の再検討をしておきましょう。
※技術士法第二条定義の技術士の業務は、計画・研究・設計・分析・試験・評価です。
そうか!5つの経験業務は、成長している視点も重要だ。それなら、分析や試験などキーワードを使って業務の広がりをアピールしてみよう。
技術的思考の流れを整理すること【重要】
続いて、詳細経歴書の論述に関し、最も重要と呼べる指摘がありました。
詳細経歴書では、課題設定と理由、解決策の着眼点とその説明に力点をおいて、表現検討をすること。
口頭試験を視座した対策をするために、技術的思考の流れを整理するよう、指摘がありました。
業務概要(目的)・立場役割・課題(問題点含む)・課題解決策(提案)ならびに成果の目次を設定したら、項目に準ずる内容のみ記載します。ここで上記指摘した課題設定(着眼点含む)までのプロセスと設定理由、解決策の提示(着眼点含む)とその理由が不明確ですと、口頭試験で詰問されます。順序よく論理的に記述ください。
「背景と問題点」記述内容を以下の流れで、再整理ください。この流れをお勧めする理由は、口頭試験で本試問が必ずあり、経歴書作成時点から、課題設定(抽出)の思考プロセスを整理するためです。
例 「・・・・・という問題点があった。私は、・・・に着眼し、・・・・を課題設定した。その理由は、・・・・である」
そ…そうか。私の文章は、「○○が必要だ。○○を行った。結果○○だ。」と淡々として思考プロセスが伝わらない…!これは伝わらない論文の典型だ!
このような指摘を受け、次のように修正しました。
2.背景と問題点
【修正前】
建築資材の使用量軽減のため、建築物に占める〇〇高さを、従来比で〇〇mm低減する必要があった。そのため〇〇のブレーキは〇〇%小形化する必要があった。
しかし以下の理由で困難であった。ブレーキを制御するために、電磁コイルを利用している。電磁コイルの吸引力は、電流値×巻数で決まり、発生した磁束を通すための鉄心容積が必要となる。しかし従来と同等の制動力が必要だったため、鉄心容積を削減できず、小型化は困難であった。
【修正後】
建築資材の使用量軽減としてエレベータの高さを0.7m低減するため、巻上機のブレーキは12%の小形化が必要であった。ブレーキの開閉動作を担う電磁コイルの鉄心は、ブレーキ全体の61%の体積を占める。鉄心の小形化は、透磁率の高い低炭素鋼への変更が有効だが、コストが増大するという問題点があった。私は残り39%の非鉄心部に着眼し、非鉄心部の体積を27%低減するよう課題設定した。その理由は、「コイル部の小形化設計は効果が限定的」、「強度設計を詳細検討する余地がある」と考えたからである。
修正した受験申込書
これらの点に気をつけて、受験申込書の詳細を次の通りに修正しました。
立場と役割
基幹エレベータ開発プロジェクトのうち、巻上機のブレーキ(ドラムブレーキ)小形化を目指した全体設計(構造物の強度設計、構成部品の選定)の業務を責任者として行った。
背景と問題点
建築資材の使用量軽減としてエレベータの高さを0.7m低減するため、巻上機のブレーキは12%の小形化が必要であった。ブレーキの開閉動作を担う電磁コイルの鉄心は、ブレーキ全体の61%の体積を占める。鉄心の小形化は、透磁率の高い低炭素鋼への変更が有効だが、コストが増大するという問題点があった。私は残り39%の非鉄心部に着眼し、非鉄心部の体積を27%低減するよう課題設定した。その理由は、「コイル部の小形化設計は効果が限定的」、「強度設計を詳細検討する余地がある」と考えたからである。
技術的提案
私は非鉄心部の小形化に着眼し、以下の2点の解決策を提案した。
①空隙削減
制動力を支えるピンの穴とバネの穴は、個別に空隙部を有していた。この穴を共通化し、空隙を削減した。代償としてピンを短縮する必要があり、ピンが降伏しない最小掛かり代(5mm)と、組立時にピンがガイド機能を果たす最小長さ(47mm)を設計した。検証部門の協力を得て強度試験を行い、設計を完遂した。
②ボルト小径化
ブレーキを筐体に固定するための六角ボルトは、曲げ応力で疲労破壊しないようM20を使用していた。そこでボルトをリーマ構造とし荷重モードをせん断へ変更することで、M16に小径化した。ボルトを挿入可能な隙間を確保しつつ、強度を有し、リーマ加工費を最小とするよう設計した。製造部門の協力を得て試作を繰り返し、設計を完遂した。
成果
ブレーキを2400→2090cm3へ13%小形化した。その結果エレベータの高さを0.7m低減し、建築資材の使用量軽減に貢献した。
さあ、指摘された箇所は直したぞ。結果はどうか…!
2回目添削内容とポイント
このような様式で添削結果を頂きました。※解読できないよう、解像度を落としています。
色々とコメントはいただきましたが、大部分は「良い」「改善された」などの意見でした。
専門技術者の経験値の記述内容が大変わかり易くなりました。
見出しに括弧【】を付けると、2字増えますが見栄えが良くなりますので、検討ください。
2回目で、ほぼ完成形との意見もあり、ひとまずはホッとしました。
このあと、少し修正を加えて3回目の添削を提出しましたが、修正ポイントは特にありませんでした。
どうやって添削を受けたか
このように技術士試験合格に向けて添削が大変重要であると考えています。
そこで参考として、私が添削を受けた方法について紹介します。
有料となってしまうのですが、こちらの講座を利用しました。
8回の添削と1回の模擬面接が付く講座で、私は2022年の合格を目指し受講しました。
4度目の受験となりますが、通信講座を初めて受講しました。そしてついに筆記合格を果たしました!口頭試験の結果待ちです。
こんな感じでチャットアプリに申込書をアップロードするだけで、添削を受けられました。
私が受験申込書の添削を提出した際は、24時間以内に返ってきました。
他にも技術士講座を試してみましたが、アガルート講座は返金制度が大変魅力的です。
アガルートの技術士講座をレビューしました。驚愕の返金制度あり>>
技術士講座の比較については、こちらでまとめたので、気になればどうぞ。
技術士(二次試験対策)のおすすめ通信講座を6社紹介>>
まとめ
ここまでお読み頂きありがとうございます。
受験申込書に頂いた添削ポイントについて次のようにまとめます。
専門とする事項(=機械構造設計)は、「何に関する事項」なのか。主語を明記すること。
→「機械構造設計」から「回転機械と電磁ブレーキの構造設計」に修正した。
5行の業務経歴では、毎年もしくは業務が変わるにつれて、成長していることをイメージすること。
技術的思考の流れを整理すること【重要】
→「…という問題点があった。私は、○○に着眼し、○○を課題設定した。その理由は、○○である」
私の受験申込書例が、皆様にとって役立ち情報があれば幸いです。
当ブログでは技術士を目指す方へ、有益な情報を発信するよう努めて参ります。
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それでは、皆様の技術士試験、並びに技術者生活に良き事がありますように。
あなたの技術士二次試験合格を応援します!
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