技術士二次試験に提出する申込書の概要から、書き方のコツまで説明します。
受験申込書は口頭試験の審査項目。
要点を押さえた業務経歴を書く事が必要。
筆記試験で合格しても、口頭試験で落ちないよう、しっかりと対策が必要。
これから受験申込書を提出する方はもちろん、提出済みの方も口頭試験対策としてご確認下さい。
受験申込書を提出済みだが、口頭試験のために対策したい。
これから受験申込書を書く上でポイントを押さえたい。
受験申込書とは?
技術士二次試験を受験するために提出します。
技術士会のホームページから受験申込書を入手し、ご自身で記入し発送下さい。
受験申込書の提出は4月
受験申込書の提出は、例年4月です。
遅くとも3月末までには、内容を完成させておきましょう。
会社からハンコを押してもらったり、送付の手間があるので、早めの準備が吉です。
なお技術士二次試験の全体スケジュールは、おおよそ以下の通りです。
- 4月:受験申込書の提出
- 7月:筆記試験
- 11月:筆記試験の合格発表
- 12~1月:口頭試験
- 3月:合格発表
(2) 受験申込書の形式
受験申込書は、日本技術士会のホームページから入手できます。
構成は以下の通りとなっています。
①氏名や技術部門などの基本情報を記入する欄
②技術士二次試験の受験資格を証明する欄
③業務経歴の全体を記入する欄
④業務内容の詳細を記入する欄
一つずつ順番に説明いたします。
①氏名や技術部門などの基本情報を記入する欄
氏名や技術部門などの基本情報を記入していきます。
特に合否に関わるような注意点は有りません。
申込書に付属している注意事項をよく読んで記入すれば問題ないでしょう。
②技術士二次試験の受験資格を証明する欄
技術士二次試験の受験資格を証明するために、次の経路1~3のどれに該当するか証明します。
【経路1】指導技術士の基で実務経験4年以上
【経路2】職務上の監督者の下での実務経験4年以上
【経路3】実務経験7年以上
こちらも、申込書に付属の説明で、問題なく記入できると思います。
③業務経歴の全体を記入する欄
業務経歴の全体を記入します。
口頭試験でも確認されるため、記入に注意が必要です。詳細は後ほど説明いたします。
④業務内容の詳細を記入する欄
業務内容の詳細を記入します。
口頭試験でも確認されるため、記入に注意が必要です。
詳細は後ほど説明いたします。
受験申込書はなぜ重要か?
不備があると受験できない
まず、申込書の記載内容に不備があると、受験できません。
申込書が返却され、速やかに再提出する事が必要となります。
基本的な事項となりますが、以下点に漏れが無いようご注意ください。
受験手数料払い込み用紙は貼り付けたか
二次試験の受験資格を証明する書類は同封したか
業務経験年数が必要年数以上か
業務経験年数のカウントミスは無いか
業務の詳細は720字以内か
※業務経歴を証明する印鑑は社外向けの物か
※会社内で使用する役職印で提出したところ、再提出の要求が有りました。
厳密にチェックされるので、後悔が無いよう出したいです
申込書は口頭試験での審査項目
申込書は口頭試験の審査項目に含まれます。
令和3年の受験案内には次のように記載されています。
「筆記試験における記述式問題の答案及び業務経歴を踏まえて口頭試験は実施される。」
なお、口頭試験では次のような事を質問されると聞いています。
※スタディング技術士講座や新技術開発センターのセミナーを聞いての情報。
- 業務経歴の確認、質問【申込書】
- 業務詳細の確認、質問【申込書】
- 筆記試験、問題Ⅲの解答意図確認
- 筆記試験、問題ⅠorⅡの解答意図確認(低確率)
- ニュース(災害・事故・品質問題)に対する考え方の確認
- 技術者倫理、技術士法の理解度確認
▼口頭試験の想定質問や対策については、こちらに記載しました。
口頭試験で不合格はもったいない
筆記試験は合格率が20%以下の難関です。
一方口頭試験は合格率が80%程度と高いです。
口頭試験を不合格になると、翌年筆記試験をまた合格する必要が有ります。
受験申込書の書き方【コツ】
業務経歴は技術士の業務を書く
業務経歴は技術士の業務を書きましょう。
技術士法により、技術士の業務は以下のように定められています。
技術士の業務が正確に書けなければ、「技術士法を理解していない」と見なされ、減点の対象となってもおかしくありません。
第二条 この法律において「技術士」とは、第三十二条第一項の登録を受け、技術士の名称を用いて、科学技術(人文科学のみに係るものを除く。以下同じ。)に関する高等の専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計、分析、試験、評価又はこれらに関する指導の業務(他の法律においてその業務を行うことが制限されている業務を除く。)を行う者をいう。
技術士法より引用
技術士法 第1章 第2条によると技術士の業務は以下です。
計画
研究
設計
分析
試験
評価
又はこれらに関する指導の業務を行う者。
ここは受験申込書を書く上で、かなり重要なポイントになります。
技術士法で示されている6個の業務(計画・研究・設計・分析・試験・評価)は全て理解したいです。
ここで注意が必要なのですが、よく使う「開発」「解析」「調査」は入っていません。
開発、解析、調査はこれらに入っていません。
特に開発を業務内容として記述される方は多いと推察しますが、不適切です。
○○の開発における設計。
△△の開発における試験、評価。
このように記載するよう心掛けましょう。
業務経歴は職務ではなく技術経験を書く
業務経歴は職務ではなく、技術経験を書きましょう。
まず、こんな書き方はNG!という例を紹介します。
これは職務の説明になっています。
立場と役割について書く事は良いですが、実際に行った業務内容が不明確です。
こんな書き方ならばOKです。(添削を受けました)
業務内容の詳細は過不足なく書く
業務内容の詳細(720字)は、過不足なく書きましょう。
構成は以下の通り提案します。
どうしてその「課題」が重要なのか。
どうしてその「解決策」が課題に有効なのか。そこがポイントです。
以下の構成で過不足書けると良いです。
1.背景
2.立場と役割
3.技術的課題と問題点
4.技術的解決策
5.成果
6.(リスクの対策)(今後の展望)
720文字と限られるため、リスクの対策、今後の展望についてはカッコ書きとしました。
未記入とした場合、口頭試験で聞かれると思います。
敢えて申込書に書かず当日説明し、前向きな展望をアピールするのも良さそうです。
受験申込書は口頭試験を意識する
受験申込書は口頭試験を意識しましょう。
特に以下の点に関する「なぜ?なぜ?」に答えられるよう準備しましょう。
- なぜその課題が重要と考えるか
- なぜその解決策が有効だと考えたか
- 目的に応じた効果が出ているか
- 解決策を講じた際のリスク確認は十分か
- 科学技術の向上と国民経済の発展に資するか
効果を書く際は、運よく発生した効果を書くよりも、目的に応じた(狙った)効果を書きましょう。
技術士とは、科学技術の向上と国民経済の発展に資する事を目的とする点を忘れないように。
解決策はなるべく具体的に書く
解決策はなるべく具体的に書きましょう。
試験官は理想論を聞きたいのではなく、あなたの技術経験を聞きたいのです。
上記は具体性に欠けるため、本当に業務経験したのか疑問が残ります。
このように修正すると良いでしょう。
※実際の申込書には、複数の解決策を書く必要はありません。スタディング講座では、一つの解決策を丁寧に説明する事を推奨していました。
効果は数字を用いて示す
効果は数字を用いるとより明確に伝わります。
単純に、コスト低減した、小形化したと述べても曖昧さが残ります。
定量化が難しくても、自分なりに筋が通った説明を考えてみましょう。
自分の裁量を超えない範囲で、技術的な定量効果を説明しましょう。
何度も読みなおす
口頭試験本番では、3分程度で説明する事を求められる場合が有ります。
自分で業務経歴を読んで、違和感を覚える事が無いようにしましょう。
もちろん、口頭試験では、原稿通り読み上げる必要はありません。
むしろ試験官も一度目を通しているので、同じ内容を説明する事はオススメできません。
文章と話し言葉で、ニュアンスは異なってきます。
何度も受験申込書を読み上げてみて、内容に不備は無いか、論理の破綻や飛躍が無いか確認しましょう。
可能ならば添削を受ける
しっかり受験申込書が書けているか、不安になる方も居ると思います。
身近に技術士が居れば、その方に添削をお願いすると良いです。
もし身近に技術士が居なければ、信頼できる方に添削を受けると良いです。
▼スタディング講座は格安で計10回の添削を受けられるのでオススメです。
こちらにスタディング講座を紹介していますので参照ください>>
口頭試験への備え方
受験申込書を提出済みの場合
全然見当違いの業務経歴書を提出してしまった場合は要注意です。
例えば以下のようなミスが該当します。
- 業務の立場と役割を書いていない
- 職務経歴を書いてしまい、技術経験を書けていない
- 500文字程度しか書いていない
- その業務を行った理由や、技術的解決策を一切書いていない
申込書の評価としては不合格レベルでしょう。
試験官も口頭試験でふるいを掛けるような質問を考えているかもしれません。
ではどのように挽回するか?
受験申込書でのミスは素直に謝り、こう書きたかったという意図を説明しましょう。
業務経歴の説明を求められた際、悪さ加減を素直に謝りましょう。
いきなり申込書と違う説明をする前に、不備を理解している旨を試験官に伝えましょう。
一方、少し見当違いが気になるが、本番修正できそうな場合も有ります。
- 開発、解析、調査を業務経歴の中心として書いてしまった
- 定量的な効果を書いていない
- 技術的解決策が具体的でない
この程度のミスであれば、当日の説明と質疑応答で挽回可能でしょう。
想定質問と答え方を反復練習しておきましょう。
受験申込書の提出はこれからの場合
上で説明したポイントを意識し、業務経歴書を作り込んで下さい。
失敗したら口頭試験に差し支える事を理解し、申込書の完成度を上げる事が肝要です。
筆者の受験申込書を紹介
最後に、筆者の受験申込書を紹介します。
これで十分とは思っていませんが、受験申込書で受けた添削を踏まえて作成しています。
こちらの受験申込書を添削に出しましたが、大幅に修正されました…。
▼添削結果はこちらにまとめました。
申込書の添削結果を紹介します>>
1.背景
○○用○○製品(全体コストの約10%)のコスト低減が急務となり、主要部品である電磁ブレーキの部品流用、部品数削減が必要であった。電磁吸引力確保とライフサイクルコスト低減可能なブレーキ構成機器の仕様を選定した。
2.立場と役割
ブレーキ設計責任者として、構成部材の寸法・材質・表面処理仕様の計画、設計、実機試験の業務に従事した。
3.技術的課題と問題点
技術的課題:制動バネの従来品流用と電磁吸引力の確保
問題点:バネに対する疲労強度設計のノウハウが自社に無く、従来設計では裕度が過剰。
従来品流用時、バネ数増加に伴い電磁マグネットの空隙部が増え、電磁吸引力が低下する。
4.技術的解決策
(1)疲労強度設計によるバネ選定
硬度と圧縮残留応力を測定し、バネの引張強度を推定した。疲労強度線図から○○万回動作に対し安全率= ○○ を確保した。
(2)バネ力伝達機構とトルク受け部材の集約化
S45C焼入れ材、φ ○○ のピンを設計し、バネ力と制動トルクの連成荷重に対し短期、長期共に安全率= ○○ を確保した。
(3)ブレーキ固定用ボルトのリーマ構造採用による小径化
S45C焼入れ材、軸径φ= ○○ リーマ構造を採用。曲げ荷重→せん断荷重に変換しM20→M16に小径化した。
5.技術的成果
上記部材全て ○○ 万回の実機寿命試験を行い、破断や塑性変形が無く強度十分であることを確認した。
結果、ブレーキ部品数を ○○ 種→ ○○ 種に改善し、流用率を ○○ %とした。
6.今後の展望
製造困難部品の予測により、代替設計や製造設備の標準化を事前対策し、更なるコスト低減を推進していく。
まとめ
ここまでお疲れ様でした。
本記事のまとめとして、以下にポイントを記します。
受験申込書は口頭試験の審査項目。
要点を押さえた業務経歴を書く事が必要。
筆記試験で合格しても、口頭試験で落ちないよう、しっかりと対策が必要。
是非ご自身で受験申込書を書き、可能ならば添削を受ける事で口頭試験に備えて下さい。
▼口頭試験の対策はこちらの記事になります
その他、当ブログでは技術士を目指す方へ、有益な情報を発信するよう努めて参ります。
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