技術士二次試験の筆記試験の必須科目Ⅰで答案の書き方が分からない人
これから筆記試験の論文を書くが、筆が止まってしまった人
参考程度に必須科目Ⅰの答案を見てみたい人
技術士二次試験の筆記試験は、択一式ではなく、記述式です。
そのため原稿用紙に何を書いたら良いか分からない方も多いと思います。
私も何から書き始めれば良いか分かりませんでした…。
必須科目Ⅰは令和元年から択一式→記述式に変わりましたが、出題傾向は令和1~4年で同じでした。
そのため令和6年も同じ出題傾向と予測され、傾向に合わせた対策が効果的です。
本記事では、傾向を分析し、実際の試験に備えようというものです。
令和5年に機械部門に合格した私が、答案作成のお手伝いをさせて頂きます!
・問題Ⅰは一定の傾向が有るため対策が有効
・(1)600字、(2)600字、(3)400字、(4)200字がオススメ
・課題とは「現状」と「あるべき姿」とのギャップ
・(2)は最も重要と考える課題を選んだ理由を書く
・リスクとは解決策に潜む、不確実で危険な事象
・リスク対策は回避→低減→移転→保有
・(4)の技術者倫理は得点源
・出題範囲は広いが、白書から出題される可能性高し
必須科目Ⅰの対策全体図
必須科目Ⅰの対策の全容として、次のステップで取り組むと良いでしょう。
必須科目の審査項目や解答のコツを把握しましょう。本記事を全て読めばOKです。
文章を書く前に、3枚論文全体の骨子を作成します。骨子の書き方は、本記事後半で解説します。
4個ほど答案が完成したら、他のテーマが出題されても、今まで作成した答案で対応可能となります。
必須科目Ⅰの審査項目とコンピテンシー
本題に入る前に、技術士の筆記試験必須科目Ⅰについて簡単に説明します。
必須科目Ⅰの審査項目は次のように明記されています。(技術士の受験申込書参照)
【概念】
専門知識
専門の技術分野の業務に必要で幅広く適用される原理等に関わる汎用的な専門知識応用能力
これまでに習得した知識や経験に基づき、与えられた条件に合わせて、問題や課題を正しく認識し、必要な分析を行い、業務遂行手順や業務上留意すべき点、工夫を要する点等について説明できる能力問題解決能力及び課題遂行能力
社会的なニーズや技術の進歩に伴い、社会や技術における様々な状況から、複合的な問題や課題を把握し、社会的利益や技術的優位性などの多様な視点からの調査・分析を経て、問題解決のための課題とその遂行について論理的かつ合理的に説明できる能力【出題内容】
現代社会が抱えている様々な問題について、「技術部門」全般に関わる基礎的なエンジニアリング問題としての観点から、多面的に課題を抽出して、その解決方法を提示し遂行していくための提案を問う。【評価項目】
技術士公式HPの受験申込書より引用
技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)のうち、専門的学識、問題解決、評価、技術者倫理、コミュニケーションの各項目
つまり闇雲に回答しても点数が入るわけではなく、「審査項目」を満たした答案作りが肝要です。
審査項目について、「コンピテンシー」を意識して表にまとめると、このようになります。
審査項目 | Ⅰ | Ⅱ-1 | Ⅱ-2 | Ⅲ | 口頭 |
---|---|---|---|---|---|
専門的学識 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
問題解決 | 〇 | 〇 | |||
マネジメント | 〇 | 〇 | |||
評価 | 〇 | 〇 | 〇 | ||
コミュニケーション | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
リーダーシップ | 〇 | 〇 | |||
技術者倫理 | 〇 | 〇 | |||
継続研さん | 〇 |
審査項目 | Ⅰ | Ⅱ-1 | Ⅱ-2 | Ⅲ | 口頭 |
---|---|---|---|---|---|
専門的学識 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
問題解決 | 〇 | 〇 | |||
マネジメント | 〇 | 〇 | |||
評価 | 〇 | 〇 | 〇 | ||
コミュニケーション | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
リーダーシップ | 〇 | 〇 | |||
技術者倫理 | 〇 | 〇 | |||
継続研さん | 〇 |
コンピテンシーとは、「結果を出し続ける人の行動特性」の事を指します。
技術士に求められるコンピテンシーは、文部科学省のHPで説明があります。
当サイトでもこちらの記事で説明したので、気になる方は参照下さい。
必須科目Ⅰは、次のような評価項目で何点入りそうか、意識してください。
- 文章番号、タイトルの入れ方
- 解答は論理的整合性があるか
- 専門的学識
- コミュニケーション能力
- 問題解決能力
- 解決策を評価しリスクを見つけているか
必須科目Ⅰの出題パターン
必須科目Ⅰの出題パターンは一定の傾向があるので、パターン対策の価値があります。
機械部門の場合は、次の通り出題傾向が有ります。
他部門も同様の出題傾向が有ります。
※総合技術管理部門は全く出題傾向が異なるので割愛します。
「とある社会トレンド、技術トレンド」が提唱されている(主要テーマ)。このような社会の状況を考慮して、以下の問いに答えよ。(600字の原稿用紙3枚)
(1)以上の背景を踏まえて、あなたの専門分野だけでなく機械技術全体を総括する立場で、多面的な観点から複数の課題を抽出し分析せよ。
(2)その中で最も重要な課題を1つ挙げ、複数の解決策を示せ。
(3)解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策を述べよ。
(4)業務遂行において必要な要件を技術者倫理の観点から述べよ。
この4題の構成が令和元年から続いています。
課題解決は(1)と(2)、評価は(3)、技術者倫理は(4)で問われている事が伺えます。
必須科目Ⅰの対策
原稿用紙のおおまかな使い方
原稿用紙のおおまかな使い方を説明します。
まず原稿用紙(1枚600字)の使い方について。
(1)600字、(2)600字、(3)400字、(4)200字 が良いバランスです。
問Ⅲも原稿用紙3枚ですが、上のバランスだと、問Ⅲと同じ構成で書ける点がGOODです。
(問Ⅲは(1)600字、(2)600字、(3)600字で問題なしです)
もちろん、設問ごとの文字数は、あくまで「目安」です。
全ての設問にバランス良く答える事は重要ですが、そのことばかりに気を取られ、時間切れではNGです。
原稿用紙の使い方コツ
あらかじめ構成を決めてから、答案を書き始めましょう。
いくら技術的に素晴らしい答案でも、闇雲にダラダラ論述しては不合格です。
いくら技術的に素晴らしい答案でも、試験官から見て読みにくければ評価されないでしょう。
例えば次のように、「項目立てて整理された答案」と「ダラダラと書き下した答案」どちらが見やすいでしょうか。
技術士試験では、重要なキーワードをとらえつつ、端的に論述する力が問われます。
逆に、余計な事をダラダラと答案に書くことは、技術士試験ではNGとされています。
技術士答案の悪い例として、「黒い答案」という物が有ります。
「黒い答案」とは、章立てや図が無く、文字で埋め尽くされた答案のことです。
技術的に素晴らしい答案を書いても、論文としての見やすさが評価されなければ、不合格です。
原稿用紙の具体的な構成
今回挙げた出題パターンに照らして答案を作成すると、こんな風になります。
答案1枚目
1. 〇〇を実現するための製品例
製品例を3行で説明
1-1.一つ目の課題(〇〇の観点)
現状→問題点→課題を6行で説明
1-2.二つ目の課題(〇〇の観点)
現状→問題点→課題を6行で説明
1-3.三つ目の課題(〇〇の観点)
現状→問題点→課題を6行で説明
答案2枚目
2.最も重要と考える課題○○の解決策
最も重要と考えた理由を3行で説明
2-1.解決策1○○を利用する方法
6行で説明
2-2.解決策2○○を利用する方法
6行で説明
2-3解決策3○○を利用する方法
6行で説明
答案3枚目
3.成果と波及効果、懸念事項(orリスク)と対応策
3-1.成果と波及効果
4行で説明
3-2.懸念事項(orリスク)
5行で説明
3-3.懸念事項(orリスク)の対策
5行で説明
4.技術者倫理、必要な要件
6行で説明 以上
こうやって構成を先に決めると、一個のセンテンスが意外と短い事に気が付きます。
一行はわずか24文字なので、あっという間に3行4行書けてしまいます。
骨子を書いてから中身を書く
骨子とは、論文の構成や記述フレームを指します。行き当たりばったりにならぬよう、まず全体の地図を書いてから、詳細を書こうというものです。
骨子は、筆記試験の必須Ⅰと選択Ⅱ-2と選択Ⅲで書きます。必須Ⅰと選択Ⅲは問題の構成が似ているので、骨子もほぼ同じです。この必須Ⅰと選択Ⅲを制すると、9枚のうち6枚を攻略したことになり、合格がグッと近づきます。
そのため、ここでは選択Ⅲの出題例と、骨子の書き方を説明します。
選択問題Ⅲは、たとえば次のように出題されます。
(1)新しく開発する機械製品を具体的に一つ示し、その設計を担当する技術者の立場で、一部のコンポーネントを外製する場合の課題を多面的な観点から3つ抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。
(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題にたいする複数の解決策を示せ。
(3)すべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対応策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
上の問題文のキーワードを拾うと、課題・解決策・リスクと対応策、となります。そのため、骨子は課題・解決策・リスクと対応策 を中心に考えます。具体的には、次のステップとなります。
1) 問題文から目標と現状を読み取る
目標:あるべき姿・ありたい姿
現状:実際の姿・現在の状態
2) 問題点を分析して課題と解決策を発想する
問題:目標と現状のギャップの要因
課題:問題解決のためにすべきこと
解決策:課題の具体的な方策
3) 効果とリスクを評価する
効果:目的の達成度
波及効果:目的以外の効果
リスク:目的や方策に与える不確定な事象
※リスクは、発生が不確定で、かつ効果が消えてしまうような事象を指します。
※どうしても課題が書けない時は、先に解決策を考え、解決策から逆に課題を設定します。
上記の骨子を、論文作成前に必ず書きます。先に本文を書きたくなる衝動を抑え、骨子の完成度を重視します。最初は骨子作成に3日間かかるかもしれません。それでも骨子作成は重要だと考えます。骨子が完成したら、骨子全体で筋が通っているか、よく確認しましょう。
課題とは「現状」と「あるべき姿」とのギャップを埋める方針
まず(1)では、「課題」を書きます。
さて「課題」とは何でしょうか?
「問題点」とも「解決策」とも違います。
課題とは、「現状」と「あるべき姿」とのギャップを埋める方針。
問題点とは、「現状」と「あるべき姿」とのギャップ。
例えば今体重が80kgあるとして、半年後に75kgまで痩せる事を目標にしたとします。
現状:今体重が80kgある
あるべき姿:半年後に75kgまで痩せる
問題点:目標まで5kg足りない
課題:半年間で5kg痩せる必要がある
もう一例考えます。今度は技術的な課題を考えます。
あなたは自動車メーカの従業員です。
供給責務のある自動車の保守部品に対し、部品が製造困難となる事態が多発しています。
現状:生産中止後15年間は部品の供給責務がある。しかし年月の経過ととに、材料の法規制や市場トレンドが変化し、所望の材料を調達できないケースが発生している。
あるべき姿:供給責務のある部品は、全て製造可能な状態としたい。
さあ、課題はどうでしょうか?
もちろん悪くは無いですが、「技術士」の論文としては少し浅いです。
課題の段階でここまで具体的に書いておき、解決策では、これを具体的にどう達成するかを書きます。
最も重要と考えた理由を書く
(2)では次のように出題されます。
(2)その中で最も重要な課題を1つ挙げ、複数の解決策を示せ。
特に記載されていませんが、最も重要な課題1つを「選んだ理由」を書きましょう。
長く記述する必要はありませんが、採点者の腑に落ちる説明を心掛けましょう。
成果と波及効果はこう書く
成果と波及効果は、解決策の「プラス」部分を書いてください。
問Ⅲは具体的な製品、アイテムを想定して書きます。
自分の業務で扱った製品を取り上げ、解決策を行った場合の具体的な成果を書きましょう。
成果:解決策から得られる直接的な成果をまず書く。
波及効果:その結果、得られる周辺効果を書く。
解決策の「マイナス」部分は、懸念事項の方に書いてください。
リスクとは、解決策を実施しても残ってしまう、不確実で危険な事象
多くの技術部門の(3)で、「リスク」と、「リスクの対応策」の記述が求められます。
まず、「リスク」という言葉を正確に理解することが肝要です。
リスクとは、解決策に潜む、不確実で危険な事象を意味します。
技術士試験での「リスクを述べよ」とは、
解決策の中に潜む、「現在は顕在化していないが仮に顕在化した場合、重大な悪影響を与える不確実で危険な事象を述べよ。」
の意味。
※懸念事項は、リスクより広い言葉です。リスクの方が、回答が難しいです。まずはリスクを正確に理解しましょう。
少し分かりにくい思うので、リスクの具体的な例を出します。
リスクを正確に理解し記述する事が、ⅠやⅢ突破のカギとなります…!
ありがちな低得点答案として、解決策で解消できる事をリスクで書く、という例があります。
例えば、次のような答案は、解決案で解消できることをリスクに書いています。
この答案に対し、解決策を変更することで、筋の通った答案に変わります。
Ⅲは、課題、解決策、リスクの筋が一本通る事が、最重要です。この精度を添削などで鍛えます!
リスク対策は○回避→○低減→×移転→×保有
続いてリスクの対策について説明します。
リスク対策は4つの方法でアイデアを考えると良いです。
リスクの対策は4つの方法でアイデアを考えると良いです。
リスクの対策:①回避 → ②低減 → ③移転 → ④保有
上のリスク対策を見て分かるとおり、②リスクの低減 が良い対策案となりやすいです。
例えば②リスクの低減の一例として、先ほどの自動ブレーキで次のような答案を考えました。
センサが誤作動する前に交換を実施することで、誤作動に至る確率を減らす提案ができました。
懸念事項はマイナス要因をとにかく書けば良い
続いて、「懸念事項」を延べよ、という出題パターンも最近見られます。
懸念事項とは、「何か気になる悪い事象」と考えていただければ問題ありません。
懸念事項の一部にリスクが含まれるため、リスクの対策をしっかりすれば、懸念事項は難なく回答可能です。
※何でも書いて良い訳ではなく、「専門分野の技術士」としてふさわしい回答を作成します。
専門とする科学技術の分野において、高等の専門的応用能力が伝わる論述を心がけましょう。
技術者倫理をどう回答するか
(4)は技術者倫理を問われています。
技術者倫理については、技術士公式HPに、「技術士に求められる資質コンピテンシー」として明記されています。
技術士に求められる資質「技術者倫理」は次のとおりです。
・業務遂行にあたり,公衆の安全,健康及び福利を最優先に考慮した上で,社会,文化及び環境に対する影響を予見し,地球環境の保全等,次世代にわたる社会の持続性の確保に努め,技術士としての使命,社会的地位及び職責を自覚し,倫理的に行動すること。
・業務履行上、関係法令等の制度が求めている事項を遵守すること。
・業務履行上行う決定に際して,自らの業務及び責任の範囲を明確にし,これらの責任を負うこと。
引用元:技術士二次試験 受験申込み案内 https://www.engineer.or.jp/
基本的には、公衆の安全を最優先し、法令を遵守するなど当たり前のことを書きます。
(4)の技術者倫理 は得点源。必ず回答しましょう。
※あくまで参考として、ご自身で答案を作成する事をオススメします。
(4)業務遂行において必要な要件を技術者倫理の観点から述べよ。
【回答案】
・時代の変化に応じ、公衆の安全、健康及び福利を最優先に考慮する
・社会、文化、及び環境に対する影響を予見し、地球環境の保全に努める
・関係法令等の制度が求めている事項を遵守する
・時代とともに変化する技術、法令を理解し、PDCAを繰り返し行い、継続的に資質向上を図る
なお上の回答案は、技術士ホームページに記載している「技術者倫理」を参考に、私なりに作成しました。令和2年の筆記試験ではA判定でしたが、令和3年度では評価されませんでした。
令和4年度受験で合格した際は、もう少し題意に沿うよう工夫して書きました。次のようになります。
より題意に即して書いた令和4年度の答案
新たな部品種類削減対策によるリスクは、FMEAで抽出し、安全最優先となる対策を講じる。リスクを完全に排除する事は困難な為、ユーザに危害が及ばないフェールセーフ機能の追加を検討する。日々進歩する機械設計技術や材料技術等を積極的に活用し、持続可能な技術開発、及び国民経済の発展に努める。以上
白書を読んで主要テーマを予測しよう
必須科目Ⅰは出題範囲が広いですが、お題にはパターンがあり、多くは「白書」から出題されます。
「白書」とは、各省庁が発行する政策書であり、毎年決まった時期に発行されます。
技術士試験は国家資格なので、国の情勢や政策を捉えている必要があります。
そのため、各省庁が発行する政策書である「白書」は、とても良い参考書となります。
全部門に対して、ものづくり白書と情報通信白書は役に立つと思います。
部門ごとに次の白書を読んでおくと良いと思います。
建設部門は、国土交通白書
農業部門は、食料・農業・農村白書
森林部門は、林業白書
水産部門は、水産白書
環境部門は、環境白書
原子力部門は、原子力白書
必須科目Ⅰの過去問解答例と添削
添削を受ける前の答案
必須科目Ⅰの答案作成の参考として、私が受けた添削の例を紹介します。
まず、講師から添削を受ける前の答案を紹介します。
持続可能な社会実現に近年多くの関心が寄せられている。例えば、2015年に開催された国連サミットにおいては、2030年までの国際目標SDGs(持続可能な開発目標)が提唱されている。このような社会の状況を考慮して、以下の問いに答えよ。
(1)持続可能な社会実現のための機械機器・装置のものづくりに向けて、あなたの専門分野だけでなく機械技術全体を総括する立場で、多面的な観点から複数の課題を抽出し分析せよ。
(2)その中で最も重要な課題を1つ挙げ、複数の解決策を示せ。
(3)解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策を述べよ。
(4)業務遂行において必要な要件を技術者倫理の観点から述べよ。
答案用紙3枚分の回答をそのまま記載します。
(1)持続可能な社会実現するための現状と課題
①高齢化に伴う労働人口の減少
我が国の労働人口は、出生率の低下と、高齢化の進行により、急速に減少する見込みである。2000年で6700万人、2020年で6400万人、2040年で5200万人を見込んでいる。
②グローバル化の展開と不確実性、保護主義の高まり
グローバル化は年々浸透。その一方で、米中対立、英国のEU離脱などの保護主義の動きが顕著である。グローバルなサプライチェーンの在り方について、より一層のリスク管理が求められる。
③第四次産業革命の進展
あらゆる産業において新たなデジタル技術を使ってこれまでにないビジネスモデルが誕生している。製造業も、IoTを活用した新サービス展開や業種間連携により、シェアリングエコノミーをはじめとする産業構造の抜本的変化に対応することが求められる。
④ソーシャルビジネスの加速
環境対策、社会問題への取組が世界的関心事になっている。ビジネス上のリスクは機会として投資家も関心している。海洋プラスチックごみ問題、地球温暖化対策などの世界的課題をリスクやコストではなく、ビジネスチャンスとしていく戦略性が求められる。
(2)最も重要と考える「第四次産業革命への対応」
(2)-1最も重要とした選定理由
産業構造への変革により、人手不足や環境対策など他課題にも柔軟に対応可能となるため。
①スマホ等ユビキタス端末との親和的な連動
・コロナ対策として非接触のエレベータ操作をスマホアプリで実現
・宿泊施設の掃除ロボット連携による清掃無人化
・立体駐車場の車自動運転と荷物エレベータの連動による無人パーキング化
・オフィスビル等、毎日使うエレベータにスマホで行先階を登録しておき、自動インプットする。入力するよりも一歩早く行先階を登録可能。登録情報から、用途の多い階近くに自動停車させる事で、混雑を緩和可能である。
②業務のIoT化による効率向上
・設計データの3D化による3Dプリンタ活用、構造解析
・新設、保守、モダに連動による、エレベータ生涯収益コスト算出、製造困難部品の洗平、機種統合戦略、モジュール設計化
③運行データ活用による不具合未然防止、品質向上
・非破壊検査による部品寿命予測と、予防保全的な部品交換時期決定
・起動回数や昇降行程に応じた部品ごとの寿命推定と計画的な交換スケジュール決定
(3)解決策に共通して新たに生じうるリスクと対策
①顧客情報流出のリスク
対策:PCのデータは端末本体のディスクに保存することを禁止し、一括管理したネットワーク上のサーバに保存する。並行して、情報リテラシーの社員教育を継続的に実施する。半年に一回テスト方式でWEB回答させ、合格するまでWEB教育を実施する。
②自動化した業務の社内ノウハウ空洞化
対策:業務区切りごとに、ノウハウの資料化をトップダウンで指示する。資料化完了をもって、その業務を完了したものと位置付け、人事評価に反映させる。
③自動監視の漏れによる不具合発生
不具合に対する監視項目(人間が項目化し、PCに数値評価させる)は、人間が予め決めた範囲に留まる。
対策:完全に無人化する前に、人での点検頻度を減らす程度として自動監視を取り入れる。
(4)業務遂行において、技術者倫理、社会の持続可能性から必要な要件
・時代の変化に応じ、公衆の安全、健康及び福利を最優先に考慮する
・社会、文化、及び環境に対する影響を予見し、地球環境の保全に努める
・関係法令等の制度が求めている事項を遵守する
・時代とともに変化する技術、法令を理解し、PDCAを繰り返し行い、継続的に資質向上を図る。
以上
令和2年度ではOKでも、令和4年度に見返すと甘い…。キーワードの羅列で終わっていて、「なぜ」と疑問が残りやすい答案…。
添削を受けた後の答案
続いて、添削を20回以上受けて、根本的に改善された答案を紹介します。
消費者のもとに製品が届くまでのサプライチェーンの中で、そのスタート地点になるのは製造メーカーの“発注・調達”である。「これくらいの数量を市場に投入したいから、その数を生産するためにはこれくらいの原材料や部品が必要だ」という生産計画をもと、サプライヤーに原材料や部品を発注し、調達する。サプライヤーはその発注を受けて原材料を配送したり、部品製造に取り掛る。その後、それらの原材料や部品は製造メーカーに集められ、生産ラインで製品が作られ一度在庫として管理し、販売計画にのっとって適切な卸業者に配送し、最終的にはそれが店頭に並んで消費者の手元に届く。また、情報は、こうした製品の流れとは逆方向にさかのぼる。消費者から製品に関する評価などの情報が店舗に流れ、その評価とPOS入力の情報を受けて「これくらいの数量が欲しい」という情報が卸業者に流れ、その他の情報も巻き込みながら製造メーカー、サプライヤーへ逆流する。この流れに問題が発生すると、製造メーカーは市場需要が把握できなくなり、適切な製品を市場に投入できないばかりか、投入までのリードタイムが長期化したり、在庫が膨れ上がったりしてしまい、ビジネスが成立しなくなる。
こうした問題を回避するために、サプライチェーンマネジメントでは製品の流れと情報の流れを管理し、最適化を図り、適切なタイミングで適切な製品を市場に投入し、さらにそこから得られる情報を新たな”ビジネスへと繋げていくことを目的としている。
上記を踏まえ以下の設問に答えよ。
(1) あなたの専門分野との関係を簡単に説明し、技術者として多面的な観点からサプライチェーンマネジメント構築のための課題を抽出し分析せよ。
(2) 抽出した課題のうち最も重要と考えられる課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3) 解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。
(4) 業務遂行において必要な要件を技術者としての倫理、社会全体の持続可能性の観点から述べよ。
答案用紙3枚分の回答をそのまま記載します。
1.サプライチェーンマネジメント(SCM)構築のための機械技術課題
1-1.機械分野でのSCM構築と製品例
機械分野のSCM構築では、素材や部品の調達性向上や製作スピード向上、製品製作タイミングの把握が課題となる。SCM構築として、製品例は図1の巻上機を想定する。巻上機は、ブレーキ(以下BK)を有す回転機械である。
1-2.製品ライフサイクルを俯瞰した部品種類削減
設置後40年稼働する巻上機は、保守部品の需要が大きい。よってSCM構築では、旧品を含む製品全体の部品種類削減が効果的である。しかし、BK寸法に影響するバネやパッドでは、機種毎の最適設計が優先され、部品の共通化が難しい。この部品共通化困難な問題に対し、ライフサイクルを俯瞰した合理的な設計が課題である。
1-3.製造のスピード化を実現する自動化製造設備設計
在庫の極小化を実現するSCM構築では、自動化製造設備による製造スピード化が有効である。しかし、質量が大きく多品種少量生産品の巻上機は、製造設備が大型化・多機種化しやすい問題がある。この大型化・多機種化の問題に対し、ネック工程の可視化や製品シリーズ化など、費用対効果のある自動化製造設備設計を行う。
1-4.部品寿命を考慮した部品交換時期の計画
故障時のリスクが小さい油排出用ゴムチューブは、熱疲労破壊等で破断後に部品交換する。しかし、故障後の非計画的な部品供給では、リードタイムの増大を招く。このリードタイム増大の問題に対し、アレニウス則による熱設計や物件環境データ分析から、部品交換時期を計画する。
2.最も重要と考える部品種類削減課題の解決策
エレベータの部品は28万種を超え、部品種類削減が急務なため、部品種類削減の課題に対する解決策を示す。
2-1.コンカレントエンジニアリングによる種類削減効果の評価
設計者は、開発企画段階から工作・資材・営業・保守のキーマンを集め、部品種類削減の効果を評価する。この種類削減効果の評価では、梁モデル等で低次元化し設計の実現性を簡易評価すると共に、素材費、作業費、間接費のライフサイクルコスト(LCC)を算出する。開発企画段階でLCCを評価することで、後戻りの少ない開発となる。
2-2.PDMによる技術情報の共有
旧品を含む製品全体の部品種類削減では、代替設計時に、素材や部品の種類を増やさない事が肝要である。部品種類を増やさない代替設計では、応力集中箇所や安全率等、設計情報をPDMに格納し技術伝承する。PDM上の情報は、担当者以外が容易に閲覧可能となる。
2-3.バリューエンジニアリング(VE)を利用した部品機能の集約
VEを利用した部品種類削減では、巻上機の部品毎の機能と価値を評価し、機能が重複した部品の削減を行う。例えば、BKのせん断力を受けるガイドピンと、バネ力を調整するバネ受けは、共にせん断力を保持する機能を有しているため、ガイドピン削減の設計を行う。
3.リスクと対応策
3-1.信頼性評価段階での製品不具合発見(リスク)
2項の解決策を講じても、信頼性評価段階でBK制動力不足などの製品不具合が見つかり、部品種類削減を断念するリスクがある。なぜなら、巻上機のBK制動力は、温度・湿度・パッド素材の組成・寸法・動作幅・制動面への油付着など様々な誤差要因があり、設計段階で組合せを含めたワーストケースの想定は難しい。
BK制動力低下の発生では、カゴの位置を保持できなくなり、乗客がカゴに挟まれる重大事故に至る。
3-2.タグチメソッドを利用した信頼性評価(リスク対策)
製品不具合の未然防止では、タグチメソッドを利用した信頼性設計を行う。BKの制動力は、BKパッドの摩擦係数のばらつきを少なくすることが重要である。その摩擦係数は、面圧分布や使用温度などにより変動するため、タグチメソットを活用して、BKパッドの形状や材質の最適化と制動力の最適化を図る。ワーストケースでのBK制動力確保では、誤差因子(温度・湿度・動作幅・付着油量)による制動力バラツキを抑えた設計を行う。
4.技術者倫理、持続可能性の観点での要件と留意点
新たな部品種類削減対策によるリスクは、FMEAで抽出し、安全最優先となる対策を講じる。リスクを完全に排除する事は困難な為、ユーザに危害が及ばないフェールセーフ機能の追加を検討する。日々進歩する機械設計技術や材料技術等を積極的に活用し、持続可能な技術開発、及び国民経済の発展に努める。以上
添削のおかげで、答案の「型」が完成しました。令和4年度では、オールAでの筆記合格となりました。
このように、論文の「型」ができると、あとはレパートリーを増やせばOKとなります。
「型」の習得は、最初のうちは、誰かのものを真似るのが良いでしょう。
真似て答案を作成→添削→再び答案作成 このリズムが私を合格に連れてくれました。
参考として、添削を受ける上での講座を紹介します。
▼添削のためにどの講座を受けようか迷っている方は、こちらが参考になると思います。
【添削ならコレ!】技術士(二次試験対策)おすすめの論文添削を6社紹介 ランキングベスト3を発表!>>
▼スタディング技術士講座での添削例
スタディングの技術士講座で必須科目Ⅰを受けてみた 再提出からA判定の軌跡
▼アガルート技術士講座での添削例
アガルートの技術士通信講座で必須科目Ⅰの添削を受けてみた>>
まとめ
ここまでお読み頂きありがとうございます。筆記試験の問題Ⅰ攻略ポイントについて次のようにまとめます。
- 問題Ⅰは傾向把握と対策が有効
- 白書から出題される可能性高し
- 600字、600字、350字、250字で使う
- 課題とは「現状」と「あるべき姿」の差
- (2)は最も重要と考えた理由も書く
- リスクとは解決策に潜む不確実で危険な事象
- リスク対策は回避→低減→移転→保有
- (4)の技術者倫理は得点源
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日本ではIT業界や若年層を中心に普及が進みましたが、技術士界隈での普及はこれからでしょう。
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Udemy技術士二次筆記講座の内容
1.講義動画
技術士の概要
試験準備
論文作法を学ぶ
受験申込書の書き方
筆記試験対策
2.学習支援
A評価論文例
B評価論文例
受験申込書の攻略シート
2枚論文の攻略シート
3枚論文の攻略シート
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