技術士二次試験の論文はどう作成する?論文作成の心構えと論文作法を解説

この記事がおすすめな人

技術士二次試験を初めて受けようと思っている

技術士の過去問を見て、どう回答して良いか途方にくれている

筆記試験の対策を何から始めて良いか分からない人

技術士二次試験で、論文対策、何から始めたら良いか分からない。

そのように途方に暮れるのも無理は無いと思います。

実は私も技術士二次試験を受験する初年度は、どう論文を書いて良いか分かりませんでした。

原稿用紙3枚で記述するといっても、自由に書いて良いんですか?違いますよね…?

技術士の筆記試験を突破しようとしたら、以下の手順を踏む事が推奨されています。

  1. 答案の書き方について正しい情報を知る
  2. 自分が納得するまで書く
  3. 有識者からフィードバック(添削)を貰う
  4. 答案を修正し完成させる
  5. 練習を積み重ねる

この中で「①答案の書き方について正しい情報を知る」の前段に当たる説明を致します。

技術士二次試験を受験する方は「知識」が豊富だが、「記述力」が足りず、試験官に伝わらないようです。

そこで少しでも皆様の「記述力向上」の助けとなるよう、「論文の書き方」を説明します。

「論文の書き方」。論文作成や学会発表の経験がある方には簡単かも…。でも大事なんです…!

なお具体的に設問ⅠⅡⅢの対策が気になる方は、本記事ではなく以下を参照下さい。
問Ⅰの対策はこちら
問Ⅱの対策はこちら
問Ⅲの対策はこちら

結論

・論文作成の力は、毎日少しずつ、計画的に学習して積み上げる

・「主語」と「述語」は明確にして、1文は80字以内とする

・「指示語」は明確にして、接続詞を効果的に使う

本記事では、の講座にて説明頂いた内容をベースに、記事を作成しました。

無料体験でも、この内容を動画で更に詳しく聞けます。

この記事を書いた人

令和5年に技術士(機械部門)合格
技術士講座で試した講座は6社
記事コンテストで銅賞獲得

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たけゆう
目次

論文を書く前の心構え

基礎から積み上げる

毎日論文を書いて、基礎力を積み上げましょう!

論文を書いて、「読解力」「作文力」「論理的な考え方の表現」を身に付けていきます。

技術士二次試験は、論文を書く(記述式)試験です。

これは、マーク式(択一式)とは異なり、自分で論述する力が求められます。

ここで質問ですが、技術士試験を受ける方は、どんな人が多いでしょうか?

技術士試験の受験者は、国公立大有名私立大学を卒業した人が大半。

しかし合格率は、毎年10~15%。

つまり大学受験の成功者が集まった中で、そこから上位10~15%をアピールする事が必要。

大学受験と同じように、キーワードをどんなに暗記しても、合格点には到達しません。

例えばこのように勉強をしても、技術士試験対策としては不十分と言えます。

キーワードをネット検索し、貼り付ける。
回答を覚える。
キーワードを覚える。

そうではなく、自分で論文を書く力が求められます。

キーワードをネット検索し、その情報をもとに自分でまとめる

既定の答案用紙内で、説明しきる。

キーワード集を、自分の言葉で、論理的に作る

やらなきゃいけないのは、地道に論文を書く。作文する。

自分の考え方を、読み手に伝わるように、論理的に書いていく。

アウトプット7、インプット3くらいで良いので、簡単な論文作成から始めましょう。

学習計画の重要性

論文対策で一夜漬けは通用しない

1~2か月先までスケジュールを書く

スケジュールを自分の目に付くところに置く。

エクセルでも構いません。

スケジュール帳でも構いません。

1~2か月先を書きましょう。

そして、スケジュールを自分の目に付くところに置きましょう。

論文対策で一夜漬けは通用しません。

計画的にインプットアウトプットを繰り返しましょう。

なお、技術士二次試験のスケジュールはこのような流れです。

Ⅱ-1から始めよう

問Ⅱ-1 → 問Ⅱ-2 → 問Ⅲ → 問Ⅰ の順で対策しましょう。

問Ⅱ-1は過去問5年分を、1問残さず解きましょう。

問Ⅰは最も難度が高いです。

難しい論文から手を付けては、挫折する可能性も有ります。

まずは論文としてのハードルが低い、1枚論文(Ⅱ-1)から始めましょう。

Ⅱ-1 → Ⅱ-2 → Ⅲ → Ⅰの順に解きやすいです。

※得点が大きい3枚論文が合格への鍵であり、選択Ⅲが試験の肝です。

問Ⅱ-1ですが、過去3年分くらいは、1問残さずにやりましょう。

ここで専門分野に対する基礎知識を、築いていきます。

もし時間が無いなら、キーワードを全て説明できる自信を付けておきましょう。

回答を考えるとき、問題文が求めているものは何かを考えてください。

正答が何か分からなく、モチベーションを維持するのが難しいなら、添削を受ける事をお勧めします。

添削を受けるなら、質が高く料金も良心的なstudyingがオススメです。

▼キーワードの練習方法は、こちらで詳しく解説しました。
技術士二次試験の効果的なキーワード練習方法を解説!機械部門キーワード集公開>>

なるべく毎日。一夜漬けは避けよう

スポーツのトレーニングと同じで、繰り返し何度も練習が必要。

目標1:論文を最後まで書けるようにする
目標2:制限時間内に論文を書き上げるようにする

人によって生活のリズムが違うので、「これ」といった正解はありません。

1回、2回、回答を書いただけでは、回答時間は早くなりません。

スポーツのトレーニングと同じで、繰り返し何度も練習が必要です。

論文作成の作法

ここからは、論文作成の具体的な作法を説明します。

私が「添削」を受けてきて、指摘されたところを中心に、「大切な箇所」を紹介します。

これらを徹底することで、私の答案は40点→80点に伸びました!

「主語」と「述語」を明確にする

論文作成に慣れても、本当によくやるミス…

それが、「主語」と「述語」が明確になっていない。という点です。

メールやブログでは、口語での文書作成となるため、「主語」と「述語」を曖昧にしがちです。

しかし、技術士筆記試験は、「小論文」の試験です。

論文本文では、「主語」と「述語」を明確に書きましょう。

文書作成の作法が伴っておらず、大幅減点。せっかくの論述を評価して貰えない、ではもったいない。

せっかく、学会誌と論文で仕入れたネタが…。内容を見る前に「基本」ができてないから、読んで貰えないとは…。

皆様は、私を踏み台にして、添削で良い評価を貰ってください。

まずは、悪い例を紹介します。こちらの悪い例は、助詞の「は」「が」がありません。

製品例として、図1の巻上機ブレーキ(以下、BK)を想定する。綱車を摩擦保持しカゴを静止させる安全機械である。

続いて、良い例がこちらです。「は、」を使うことで、主語の場所がはっきりと分かります。

製品例、図1の巻上機ブレーキ(以下、BK)を想定する。BK、綱車を摩擦保持しカゴを静止させる安全装置である。

もう一例紹介します。

定期的に品証・資材・工作担当者を集め、データの変更点や他機種への展開等コミュニケーションを図り、次製品の開発もスムーズに行える。

製品の開発円滑化では、定期的に品証・資材・工作担当者を集め、データの変更点や他機種への展開などコミュニケーションを図る。

少しの改善ですが、効果は大きいです。

表題は「体言止め」、本文は「主語と述語を明確化」です。

論述の根拠を示す

技術士の筆記試験は、小論文です。論述の根拠を示しましょう。

例えば、箇条書きだけ示して、根拠の無い論文は評価されません。(Ⅱ-1は例外です。)

箇条書きだけを使い、評価の低い論文

3-1.リスク
 カメラとセンサを使用した遠隔診断を導入するリスクは、以下の通りである。
 ・製造情報や個人情報の情報漏洩のリスク
 ・ネットワークの障害による遠隔故障不能のリスク
 ・センサの故障による誤診断

3-2.リスクの解決策
 リスクの解決策は、以下の通りである。
 ・セキュリティソフトの導入と情報の暗号化
 ・センサの稼働状況見える化と二重系の設置

もちろん、主張だけ示して根拠がない文章は、評価が低いです。

2-1.タグチメソッドを活用したブレーキ制動力設計
 規格設計条件と法規を考慮し、QCDのバランスに留意してタグチメソッドを活用する。寸法・材質等の設計因子と、素材・環境バラツキ等の誤差因子に対し、出力値のばらつきを抑えることで最適形状に近付ける。

私は、Ⅱ-2の2枚論文で、上の答案を自信満々で提出しました。

タグチメソッドで実際に設計して、製品を小形化した経験があったので、自信満々でした。

しかし、この論文は「40点」で返却され、赤ペンの嵐でした…!

評価が悪い理由は、

タグチメソッドに着目した理由は?

出力値のばらつきを抑えると、なぜ最適形状に近付く?

このような疑問が残る論述だったため、先の答案は評価が悪いです。

この疑問に答えながら、同様の記述量で修正したのが、次の答案になります。

2-1.タグチメソッドを活用したブレーキ制動力設計
 ブレーキの制動力は、ブレーキパッドの摩擦係数のばらつきを少なくすることが重要である。その摩擦係数は、面圧分布や使用温度などにより影響するため、タグチメソッドを活用して、ブレーキパッドの最適形状と制動力の最適化を図る。

短く歯切れの良い文章とする

短く歯切れの良い文章とします。80字以上の長文は、避けましょう。

句読点「、」は2個まで。多くても3個が許容限度です。

短すぎて要点が伝わらない、のも良くないですが、長すぎる文章は読みにくいです。

こちらは、私が最初に書いた悪い答案です。

PDM(プロダクトデータマネジメント)を活用し、品証・資材・工作部門と常に最新のデータを共有することで後戻りを防ぐとともに、定期的に関係者を集め、データの変更点や他機種への展開などコミュニケーションを図ることで、次製品の開発もスムーズに行える。

長すぎて、何が何だか分からない。主語も曖昧…。

こちらの文章は、赤ペンを貰って、次のように修正しました。

後戻りのない開発では、PDM(プロダクトデータマネジメント)を活用し、品証・資材・工作部門と常に最新情報を共有する。次製品の開発円滑化では、定期的に関係者を集め、データの変更点や他機種への展開などコミュニケーションを図る。

文章を切ることで、主語と述語の関係も明確になりました。

皆様は、24字詰めの原稿用紙を3行以上、1文で書かないよう気を付けて下さい。

「この」「その」「これ」「それ」指示語を明確にする

「この」「その」「これ」「それ」の指示語を何を示している?指示語を明確にしましょう。

指示語が明確になってない、悪い例はこちらです。

ブレーキの制動力不足により、戸開走行し、人が圧死した事故例がある。これを防ぐため、UCMPなどの認定規約が定める事項を調査する。

皆様は、上の文章を読んだ時、どう感じたでしょうか?

何も違和感を感じなかったとすれば、「日本語の曖昧さ」に浸かっています。

・これを防ぐってどれを防ぐのか?

制動力不足を防ぐのか、戸開走行を防ぐのか、人が圧死することを防ぐのか曖昧です。

この文章例を添削で修正した結果は、以下の通りです。

ブレーキの制動力不足により、戸開走行し、人が圧死した事項例がある。この制動力不足の防止では、UCMPなどの認定規約が定める事項を調査する。

この文例の通り、指示語を曖昧にしない癖を付けたところ、添削での評価が上がってきました。

接続詞を効果的に使う「なぜなら」

「なぜなら」、「しかし」など接続詞を効果的に使いましょう

技術士二次試験の論文では、接続詞の効果的な使い方が、あなたの武器になります。

私は、主張の根拠を述べるときに、「なぜなら」を使います。

特に、リスクの説明では、「なぜなら」が効果的に使えます。

なぜなら、解決策を講じてもリスクが残ってしまう理由を、採点者が重視しているからです。

リスクの評価は、技術士に求められるコンピテンシーの「評価」に相当するため、採点者は重視します。

以下文章は、模擬試験を受けたときに、特に高評価だった論述方法です。

3-1.リスク
 2項の解決策で述べた対策を講じても、パッドを固定する接着剤が破断するリスクが懸念される。なぜなら、刷毛を使用した接着剤の塗布作業場では、目視確認が難しい刷毛の抜け毛や工場内の粉塵があり、異物の混入を完全に防ぐことは難しい。

続いて、「しかし」の効果的な使用方法を説明します。

「しかし」は、3枚論文(ⅠやⅢ)の課題抽出で、次のように使います。

・○○の機械設計では、○○が必要(肝要)である。しかし、こんな問題点がある。そのため、○○が課題である。

実は、殆どの受験生が課題抽出で躓いています。

この課題抽出をクリアする論述例として、次の例を紹介します。

1-4.公共物件へのエレベータ普及拡大を実現する遠隔保守
 駅舎など公共物件では、足の不自由な高齢者でも移動できるよう、エレベータの普及が急務である。しかし、日中のエレベータ休止が難しい公共物件の保守作業は、働き手が少ない夜間に行う必要がある。この深夜作業員不足の問題に対し、カゴ床段差やBK制動力を無人で自動的に診断可能な巻上機設計を行うことが課題である。

まとめ

ここで紹介した論文作法を参考にして、レベルアップいただけると幸いです。

結論

・論文作成の力は、毎日少しずつ、計画的に学習して積み上げる

・「主語」と「述語」は明確にして、1文は80字以内とする

・「指示語」は明確にして、接続詞を効果的に使う

当ブログでは技術士を目指す方へ、有益な情報を発信するよう努めて参ります。

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それでは、皆様の技術士試験、並びに技術者生活に良き事がありますように。

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